新生銀行はどうなる?SBIは買収可能か?~米ファンドに食い物にされた20年(後)
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(株)新生銀行とネット金融大手SBIホールディングス(HD)(株)の攻防が、連日メディアの紙面に躍る。SBIが新生銀にTOB(株式公開買い付け)を仕掛けると、新生銀は買収防衛策の導入を決めた。銀行界初の敵対的TOBに発展した。混迷が続く新生銀の足跡を振り返る。
新生銀は「外国人天国」だった
2004年2月、旧長銀(日本長期信用銀行)は「新生銀行」という新しい名前で再上場をはたす。国際金融シンジケートは一部の株式を売却して2,300億円の現金を手にしたほか、約1兆円の含み益をキープした。投資ファンドの歴史上、稀にみる莫大なリターンを得たM&Aであった。
クリストファー・フラワーズ氏が率いるJCフラワーズは08年1月、TOB(株式公開買い付け)と増資を引き受け、新生銀株の32.5%を保有する筆頭株主となった。
新生銀はフラワーズ氏の銀行だった。フラワーズ氏は報酬委員会の委員長として、自身を含む取締役の報酬を決めていた。
金融庁が10年3月期から1億円以上の開示を義務づけた狙いは、法外の報酬を得ている新生銀の外国人役員の首をとることだった。亀井静香金融担当相(当時)は、新生銀は2期連続で巨額な最終赤字を計上しているにもかかわらず、「外資系役員の報酬が1億円を超えている。べらぼうな金額だ」と批判した。報酬を決めた報酬委員会委員長のフラワーズ氏にカミナリを落としたわけだ。
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「不都合な真実」に対する処方箋(前)1億円以上の役員報酬を得ていた4人の外国人執行役は、そろって10年6月の株主総会で退任した。同じく退任した八城政基会長兼社長の年間報酬は850万円にすぎなかった。新生銀は“外国人天国”であった。フラワーズ氏は十分、新生銀を食い尽くしたのである。
新首相になる岸田氏は旧長銀出身
辛口の評論家、佐高信氏は「日刊ゲンダイDIGITAL」(9月21日付)に「新生銀行は岸田文雄も勤めていた旧長銀『宏池会のサイフ』と呼ばれたワケは」を書いた。
〈小泉純一郎に抜擢されて金融担当大臣となった竹中は、5兆円の税金を使って長銀をキレイにし、それをアメリカの投資会社リップルウッドに売り渡した。
(中略)
ところで竹中はSBIホールディングスの社外取締役をしている。つまり、北尾は“竹中組”の一員なのである。ということは、すなわち“菅組”の一員で、今回のTOBについて、財務大臣の麻生太郎は、投入した税金もまだ返しきってはいないから、と慎重姿勢らしい。そして、菅の退陣である。新生銀行へのTOBが成功するかどうか、北尾はもちろん、やはり“竹中組”の五味も気が気でないだろう。〉
旧長銀を外資に売り渡した金融相の竹中平蔵氏や金融庁長官の五味廣文氏が、今度は新生銀をSBIに売り渡そうとしていることを伝えていて、なかなか面白い構図だ。
新首相になる岸田文雄氏は旧長銀の出身。かつてのエリート集団・長銀への思い入れは強い。古巣の新生銀のTOBにどういう考えをもっているのか。新しい権力者の意向を忖度する金融庁の官僚たちが、SBIのTOBにどんな態度をとるのか。見ものである。
(了)
【森村 和男】
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