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【BIS論壇No.354】日本の衰退~教育編

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は2021年10月1日の記事を紹介。

 『人新世を生きる君たちへ 次の日本への教育改革』(次の日本への教育会議編)がこのほど出版され、鳩山事務所から送付された。これと合わせて出版記念シンポジウムが9月28日、東京・永田町の憲政記念館で開催され、参加した。

 パネリストは本プロジェクトを主導した鳩山由紀夫・元首相、前川喜平・元文部科学省事務次官、寺脇研・元文化庁文化部長、首藤信彦・元衆議院議員(元東海大学教授)、平尾光司・元日本長期信用銀行副頭取(元専修大学教授)。

 「日本が直面する最大かつ喫緊の課題は経済でも外交でもなく、劣化した教育システムの抜本的改革である」との認識の下、2時間にわたる白熱した教育改革のための議論が展開された。

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 英国の教育調査機関による2021年の最新の調査によれば、世界の有名大学200校に入っている日本の大学は東大と京大のわずか2校のみ。シンガポール、中国、韓国、香港などの大学が上位に位置していることが判明、日本は経済のみならず、教育の分野でも急速に衰退していることがわかった。その結果、政治家とともに官僚も劣化。日本はこのままでは政治、経済、国の礎である最も重要な教育の分野でも急速に衰退を続けるだろう。

 前川喜平氏によれば、日本の公的教育支出は第2次安倍政権成立前の12年度文科省予算で5兆6,377億円。防衛省予算は4兆7,138億円だった。これが21年度になると、教育予算は5兆2,980億円(12年度比6%減)、防衛予算は逆に5兆3,422億円(同13.3%増)に増え、教育予算と防衛予算が逆転した。

 消耗する防衛予算ではなく、未来の日本を背負う若者の教育に資金を投入すべきであるにもかかわらず、自民党政権では真逆のことを公然と行っている。

 国立大学運営交付金も04年度の1兆2,415億円から21年度には1兆790億円に1,625億円削減されている。主なOECD加盟国の教育機関への公的支出割合は、ノルウェーの5.5%を筆頭に、カナダ・フランス・米国・英国が4%台などOECD平均は4・1%だ。一方、日本は2.9%と、韓国の3.6%に比べても低位にある由々しき事態だ。

 質疑応答で筆者は、グローバル時代に小中学生を中心にアジアとの交流を強化し、さらに多発する政界・経済界での不祥事防止に向けて倫理教育の重要性を強調した。

 筆者が学んだ鹿児島のミッションスクールでは倫理が必須で、単位を取らないと進級できなかった。鹿児島には江戸時代から郷中教育制度があり、5~6歳から20歳まではいわゆるコミュニティー教育制度があった。先輩の第1の教えは「嘘をつくな」だった。この郷中教育から明治の偉人、西郷隆盛や大久保利通、東郷平八郎海軍大将、大山巌陸軍大将などが輩出された。

 国会で118回の嘘をついたといわれる長州出身の元首相には、薩摩の郷中教育で「嘘をつかない」再教育を強く希望する次第だ。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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