2024年12月23日( 月 )

【書評】小林常雄博士著『今こそ知るべきガンの真相と終焉』

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名古屋市立大学22世紀研究所特任教授
国際伝統・新興医療融合協会理事長
中川 十郎 氏

書籍 イメージ このほど創藝社から刊行された小林常雄博士(医学博士、統合医療医師)による本書は、長年のがん研究の成果を遺憾なく発揮したがん予防の貴重な提言書であり、がん対策のバイブルだ。

 約2万6,000人以上の進行がん患者を治療。さらに、多くの病院が治療をあきらめた6,000人以上の患者を治療し、その成果である「Evidence Based Medicine(根拠に基づく医療)」による理論と実践の記録には強い説得力がある。

 長年にわたる国内外での研究の結果、「がんは遺伝子異常で生じるという悪性腫瘍塊ではなく、ミトコンドリアの呼吸代謝異常が原因で、生物学的に診断すべきだ」との説を提唱。

 「がん組織が画像診断で認識できる大きさに成長するまで待ってから治療を行うという愚かな対処療法を繰り返してはならない」とし、「最新といわれるがん治療の現場では、画像診断ができるくらいまでがんが大きくなるのを待って『切除手術』『制ガン剤治療』『放射線治療』という、いわゆる厚労省のがん標準治療」を行うことに対し、小林博士は疑問を呈している。

 「がんに対する認識があまりにも長い期間、画像診断と病理診断による天動説に固執してきた結果、がんの罹患とがん死が急増してきた。生化学的解析に基づいた機能診断学を始めないと、がんを新生物として減少させることはできない」と力説している。

 さらに、免疫の重要性を強調。「『手術』『放射線』『制ガン剤』の標準治療はすべてのがんの大きな原因で、免疫低下を無視した治療法だ」と強く批判。「免疫低下は制がん剤治療以上に悪い状況を長引かせる」と警告する。

 この点、「がんも膠原病もアトピーも潰瘍性大腸炎も、習慣病と呼ばれているあらゆる慢性病も免疫力を高めることで治せる」と唱える世界的免疫学者の故・安保徹氏(元新潟大学教授)の見解とも一致する。

 小林博士は、日本におけるがん治療の主体が外科中心であることを批判。内科、心理学、栄養学などの専門家も交えたチーム医療の必要性を強調している。さらに、日本の医学部の講座に栄養学、漢方学がないことを問題視しているが、まったく同感である。

 小林博士は、日本人ががんになる食生活習慣を行っており、その食習慣の改善が必要だと力説する。さらに、一般のがん検診とは比べものにならない精度のTMCA検査法を開発。これにより、がんの早期発見・早期治療が日本で進展することを強く期待したい。 

 10月4日現在の日本のコロナ感染者は170万人。死者数は1万7,000人強だ。一方、日本のがん患者は1日1,000人以上が死亡。年間40万人以上が死亡する。現在日本では男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんに侵され、3人に1人ががんで死亡。がんは国民病となっている。小林博士のこの名著が、日本のがん死亡者の減少に役立つことを強く希望する。

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