突然の社長交代 五洋食品産業に何が起きているのか(9)
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前回、突然の代表交代はファンドの出口戦略にともなうもの、そしてその戦略をめぐって舛田氏と筆頭株主であるファンドのイノベーション・エンジン食品革新投資事業有限責任組合(以下、IE)が決裂したものと推察した。それでは今後の展開はどうなるのだろうか。
ファンドが株式の過半を握っている状態、その危険性は舛田氏も十分に承知していたはずだ。IEが出口(EXIT)を決める時期にきていたことも当然わかっていただろう。そうしたなかで、どのような着地点をつくるか、その調整は舛田氏とIEで話し合われてきたはずだ。ファンドとしては株式を売却しないことには利益が確定しないので、「どこに」「いくらで」「どれだけ」株式を売却するかがポイントになる。この条件をめぐり対立した可能性が高い。しかも株主総会の流れを考えれば、IEは舛田氏の意向に沿うフリをしながら、突然、反旗を翻して同氏を排除した。舛田氏がいると出口戦略が進まない、つまりIEが株式を売却したい先(買収先)は、舛田氏が望む先ではなかったということだ。ファンドの論理としては、自らが望むところに売れさえすればよく、その後の経営については関知しないということだろうが…。
一方で、新代表・崎原正吾氏のインタビューからは、ファンドの思惑通りには進んでいない様子がうかがえる。象徴的なのは崎原氏が舛田氏の復帰の可能性について言及したことだ。インタビューでは出口戦略に複数の選択肢があったことが語られている。そのなかには、舛田氏の望む売却先も含まれていただろう。自らを強引に排除までした買収先の下で、舛田氏が復帰することは考えにくく、あるとすれば、IEが最初に望んだ売却先ではないはずだ。IEが予定していた売却先との交渉がとん挫し、別の売却先を採用して初めて舛田氏の復帰の可能性が出てくる。実際にその可能性が残されていなければ、崎原氏の「戻ってくる可能性もある」という発言はないだろう。つまり株主総会後もファンドと舛田氏の間で、水面下の攻防が続いていることになる。
五洋食品産業の業績が向上しているのは、同社が育ててきた「冷凍スイーツ」の評価が高まっているからだ。市場拡大の期待が膨らんでおり、その可能性は大手食品系企業にとっては魅力的なものだろう。こうした背景が同社の争奪戦につながり、代表交代劇を巻き起こすことになった。最終局面で資本の論理を振りかざしたファンドの思惑通りになるのか、それとも阻止されたのかは、遠からず明らかになるだろう。
(つづく)
【緒方 克美】
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