いま、ここから。新しい歴史が始まる 劇団わらび座 リスタートに向けた決意(前)
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(一社)わらび座 代表理事 今村 晋介 氏
1951年に東京で創立され、53年に秋田県仙北市に本拠地を移した「劇団わらび座」。日本各地の舞踊や民謡を舞台化した作品や、独自のミュージカル公演などで日本屈指の観客動員数を誇ってきた((株)データ・マックスは2017年から福岡公演を主催)。その劇団わらび座が11月2日、民事再生法の手続き開始決定を受けて秋田県庁で記者会見を行い、オンラインでも配信された。
非営利法人へ大きな転換
秋田地裁が決定した民事再生手続きの負債総額は約14億4,600万円。わらび座運営の主な収入源だった全国興行がコロナ禍を受けて激減したことが経営破綻の主な原因で、従業員を含む組織と事業を(一社)に継承し、全国から広告や寄付を募ったうえで財務体質の改善を図る。
わらび座は全国の学校興行を含む年間約800回の公演を行い、あきた芸術村(仙北市)に所有するわらび劇場では年間150校に上る修学旅行を受け入れてきた。しかし、イベント自粛などが要請されたコロナ禍の影響は大きく、昨春の緊急事態宣言以降はほとんどがキャンセルされたという。ピーク時の2010年ごろには年間20億円ほどだった売上は、昨年は約5億円と約4分の1に落ち込んでいた。
こうした危機的状況を受けて、わらび座は古くからの支援者や関係者を中心に全国から寄付を募り、金融機関の支援や雇用調整助成金を活用することで組織の存続を図ってきた。しかし2年間におよんだコロナ禍の影響はそれでもカバーしきれず、劇団は70年を経て「非営利法人」への転換という大きな決断を下すこととなった。
今後は事業を継続しながら来年3月までに再生計画をまとめ、新たに設立した非営利の「(一社)わらび座」に事業を継承する計画だ。35人の役者を含む正社員約160人やアルバイト・パートの雇用も基本的に継続する。新たな非営利法人の代表理事には、劇場事業本部長今村晋介氏が就任した。また、(株)システムソフトからコワーキング事業の「fabbit」を手がけてきた田中保成氏が理事に就任する。「fabbit」事業本部として事業再生や第2創業支援に取り組んできた実績がある。
民事再生手続きの開始を受けた記者会見では、資金調達について新機軸を打ち出した。広く法人や個人から寄付を募るとともに、施設名や作品に企業名やブランド名を付ける「命名権」を売り出す計画があるという。役者個人へのスポンサーを募集することも発表された。田中理事は「(破綻の原因は)マネジメント視点の欠如による経営面の“甘さ”」と指摘するとともに、「コスト削減を進める」などとして組織の抜本的改革に乗り出す姿勢を打ち出した。
(つづく)
【データ・マックス編集部】
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