画家・劇団エーテル主宰 中島 淳一 氏
演劇の起源は何か。古代の宗教的祭祀が発展したもの、あるいは宗教的行為の未分化の遊戯のようなものから派生したとも考えられている。古代ギリシアでは紀元前5世紀ごろにはギリシア悲劇が成立し、現在も世界中で数々の名作が劇場で演じられ、人々は惜しげもなく投げ銭をした。
日本はどうか。縄文時代の出土遺物には、土製仮面など演劇の起源に関する可能性のある遺物が存在している。これは演劇衝動というものが本能的にDNAに組み込まれていたことを示している。平安後期から鎌倉時代には、大和猿楽の一座から観阿弥・世阿弥が出て幽玄能を完成させる。イギリスでシェイクスピアが大活躍したころ、出雲阿国が歌舞伎を創始する。
わらび座のミュージカルはそうした長い演劇の弁証法的発展を背負っている。歌と踊りと台詞と音楽を創造的に融合させ、肉体と魂の凄まじいせめぎ合い、戦慄と歓喜をともなう至高の時空を舞台の上に出現させ、観客を陶酔させる。コロナ禍という未曾有の洗礼を受け、深く傷つきはしたが、殉教者として名を残すのではなく、さらに倍増した不滅の生命力の翼で大きく羽ばたこうとしている。
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