「政商」SBI北尾吉孝CEOの野望~金融庁OBを迎え入れ、大願成就に王手(4)
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新生銀行が白旗を掲げた。買収防衛策を取り下げ、SBIホールディングス(HD)傘下に入ることを決定したのだ。SBIHDによる新生銀の株式公開買い付け(TOB)が成立すれば、北尾吉孝社長CEOが掲げる「第4のメガバンク構想」実現に向けて大きく前進する。北尾氏の銀行買収の狙いは何か。竹中平蔵・元金融相、五味廣文・元金融庁長官、そして金融庁という3つのキーワードのもとに説明していく。
竹中=木村コンビが立ち上げた日本振興銀行
竹中プランでは、中小企業に対するセーフティーネット構想を打ち出していた。大手行が不良債権の抜本的処理を進めれば、中小企業への貸し渋りや貸し剥がしが広がるため、中小企業の資金需要に応える新たな銀行が必要になる。
日本振興銀行は、竹中=木村コンビで立ち上げた「実験行」で、2004年4月に異例の短期間で銀行免許が下りている。
木村剛氏が構想したのは、中小企業の救世主となる銀行を新たにつくること。金利は高いが、「無担保・保証人なし」を体現した銀行が日本振興銀行だった。だが、開業したときには、貸し渋りの嵐は去っていた。中小企業は、既存の名前のある銀行より金利の高い日本振興銀行には見向きもしなかった。既存の金融機関から借りた方が安心で、しかも安全だ。
その後、組織を温存させるために辿り着いたのが、経営が悪化したノンバンクの総元締め。「中小企業振興ネットワーク」を組織し、ネットワーク内で「迂回融資」「見せかけ増資」「飛ばし」の”3点セット”で資金を「グルグル」回した。貸出残高のかさ上げを図るため、ファミリー企業のペーパーカンパニーにも融資をしていた。
民主党政権誕生、日本振興銀行が槍玉に挙がる
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新生銀行はどうなる?SBIは買収可能か?~米ファンドに食い物にされた20年(前)竹中=木村コンビの「我が世の春」が終わった。2009年9月、民主党政権が誕生。亀井静香氏が金融・郵政改革担当相に就任した。小泉首相から守旧派として切り捨てられた亀井金融相は、小泉構造改革の残党を容赦せず、竹中金融相が後ろ盾となった日本振興銀行は血祭りにあげられた。
日本振興銀行は金融庁検査で、不良債権の山があぶり出されて経営が破綻。2010年9月10日、日本振興銀行は経営破綻を金融庁に申し立てた。申請を受けた金融庁により、預金1,000万円までの現金とその利息を保護するペイオフが初めて実施された。
「追い込み」はそれだけにとどまらず、金融庁の立ち入り検査を妨害したとして告発。警視庁は、銀行法違反(検査忌避)の容疑で、木村氏を逮捕起訴。12年3月16日、木村氏は東京地裁で懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受け、控訴せず確定した。
金融行政に通じたキレ者を自負する政策立案者は、もののはずみで、「切ったはった」の金融の最前線に押し出されてしまう。まさに小泉純一郎政権の構造改革の“申し子”であった。
刑事告発――。木村氏の人生における最大の誤算となった。「政商」としてのし上がった者は「政商」ゆえに切り捨てられるのが世の倣いであった。
新生銀行を「機関銀行化」するとの危惧
日本振興銀行に深く関わった竹中平蔵氏と五味廣文氏が、「政商」北尾吉孝氏の指南役として、新生銀行を買収する。その意図するところは何か。
日本振興銀行事件は、代表執行役が大株主であったことで、所有と分離が不十分で、経営者としての立場で行動すべき木村氏が、大株主の立場を濫用して、「機関銀行化」したことにある。
機関銀行とは、銀行の主要株主が立場を利用して、自己の有利になるように銀行を使うことをいう。新生銀行のオーナーの座に就く北尾氏が新生銀行を機関銀行化するのではないかという懸念は消えない。竹中平蔵氏と五味廣文氏が、木村剛氏と一体となって立ち上げた日本振興銀行のように機関銀行になる。これが、最も危惧されているのである。
(了)
【森村 和男】
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