親会社HISともどもコロナ禍で苦境に~ハウステンボス(株)
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2010 年に大手旅行会社(株)エイチ・アイ・エス(HIS)の子会社となり、澤田秀雄氏の手によって見事経営再建をはたしたハウステンボス(株)。だが、約 2 年におよぶコロナ禍の影響で親会社ともども苦境に陥っているほか、HIS のハウステンボス売却話も囁かれている。22 年春の開業 30 周年を控え、同社は暗礁に乗り上げたかたちだ。
開業以来18年連続赤字からHIS澤田氏による復活へ
長崎県佐世保市で1992年3月に開業したテーマパーク「ハウステンボス」。異国情緒あふれる滞在型総合リゾートとして注目を集め、96年には年間入場者数380万人を記録したが、同施設を運営するハウステンボス(株)では、開業当初から芳しくない経営状況が続いていた。立地の悪さに加え、代わり映えしない施設内容から入場者数は年々減少。2003年2月には会社更生法の適用を申請し、スポンサーとなった野村プリンシパル・ファイナンス(株)の主導の下、04年4月から経営再建に向けた新体制がスタートした。だが、テコ入れ策はいずれも起爆剤となり得ず、活気のないテーマパークからさらに客足が遠のくという負のスパイラルに陥り、もはや閉鎖寸前まで追いやられた。
窮地を救ったのが、「再建請負人」として知られる大手旅行会社(株)エイチ・アイ・エス(HIS)の創業者である澤田秀雄氏だった。10年4月にハウステンボスはHISの子会社となり、澤田氏が社長に就任。顧客層それぞれに向けたイベントや設備への投資を行うほか、社員の意識改革も進め、開業以来18年連続で営業赤字続きだったハウステンボスを、わずか半年で黒字転換してみせた。
中国資本受け入れは白紙に、澤田氏は経営から退く
澤田氏は単なる経営再建だけでなく、約150haにおよぶ広大な敷地を“実験場”として活用し、新規事業の創出にも注力。その代表例が、15年7月に第1号を開業させた「変なホテル」だ。ほかにも、再生可能エネルギーに特化した電力販売「変なエネ」やロボット事業など、ハウステンボスを実証実験の場として新たな事業を生み出していった。
だが、その一方でハウステンボスの入場者数および売上高は停滞。入場者数は15年9月期の310万7,000人をピークとして減少に転じるほか、売上高も同期の275億9,400万円をピークにほぼ横ばいで推移するなど、それまでの成長ぶりが鈍化していった。そうした事態を打開すべく、同社では海外客の取り込みを模索。中国からの誘客強化のために、18年12月ごろには一時、中国の複合企業「復星集団」からの出資受け入れも検討していた。だが、19年2月には検討中止を発表。白紙に戻した。
さらに19年5月に澤田氏は「HISの経営に集中するため」として、同社代表取締役社長の座を退任。同年12月には取締役も辞任した。すでに同社の経営が軌道に乗っていたことで、再建請負人としての役目が終わったと見る向きもあるが、澤田氏自身が被害に遭った巨額詐欺の補てんのためにハウステンボスを巻き込んだことで、引責辞任したと見る向きもある。
こうして復活の立役者である澤田氏の手を離れたことで、同社のその後の動向が注目されていた。
コロナ禍で集客に大苦戦、親会社HISも沈みゆく
そうした状況で襲いかかったのが、20年に入って本格化したコロナ禍だ。緊急事態宣言発令などにともなう56日間の休園や、人々の外出自粛などの影響を余儀なくされた20年9月期は、入場者数138万6,000人と前年同期比で約半分にまで落ち込んだ。売上高も113億2,200万円と半減したほか、営業赤字19億9,800万円、最終赤字24億3,800万円を計上し、HIS子会社となって初の赤字決算となった。直近の21年9月期も入場者数は127万7,000人にとどまり、売上高114億4,000万円、営業赤字28億100万円、最終赤字21億4,600万円と2期連続の赤字決算となった。
こうしたコロナ禍の影響は、親会社・HISでも深刻だ。HISの20年10月期の連結決算はコロナ禍での渡航制限などから、売上高は前期比46.8%減の4,302億8,400万円となり、最終赤字250億3,700万円となった。また、コロナ前には売上の8割を占めていた海外旅行の需要が消失し、国内旅行も緊急事態宣言の長期化で大幅に落ち込んだことで、21年10月期第3四半期連結決算では、売上高907億3,800万円(前年同期比77.4%減)、最終赤字332億1,700万円とさらなる苦境に陥っている。加えて12月には、HISの連結子会社2社における「GoToトラベル」の不正利用が発覚。この調査のために21年10月期通期の決算発表も遅れる事態となった。
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「Go To トラベル」不正受給事件~仕掛け人は元HIS社長・平林朗氏(前)12月28日に発表されたHISの21年10月期の連結決算では、売上高1,185億6,300万円(前年同期比72.4%減)、最終赤字500億5,000万円とさらに落ち込んだ。同決算では前述の連結子会社2社によるGoTo不正により、売上高はマイナス20億100万円、最終赤字にはマイナス3億9,500万円の影響が出ている。
業績が悪化するなか、HISでは手元資金を確保して財務基盤を安定させるために、本社不動産売却などのリストラ策も断行。その一環で示唆されているのが、ハウステンボスの売却だ。澤田氏は20年12月に、コロナ禍が長期化した場合の不動産売却に言及。ハウステンボスについては、「売却すると700億~800億円になる」と具体的な金額も明示しており、それがいよいよ現実味を帯びてきたかたちだ。
なお、従前よりハウステンボスへのカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致に長崎県と佐世保市が熱を上げているが、その勝算は不透明。少なくともハウステンボスにとっては、現状の苦況を乗り切る好材料にはなりそうもない。22年3月の開業30周年を目前に控え、数々のアニバーサリーイベントの開催なども予定しているハウステンボスだが、親会社の動向を含め、目の前に立ち込めている暗雲はそう簡単に払えそうもない。
【坂田 憲治】
代 表:坂口 克彦
所在地:長崎県佐世保市ハウステンボス町1-1
設 立:1991年10月
資本金:15億円
業 種:テーマパーク運営
売上高:(21/9)114億4,000万円仕入先:伊藤ハム、ユーシーシー上島珈琲、トーホーフードサービスほか
販売先:一般個人、旅行代理店ほか
取引行:十八親和(本店営業部)関連キーワード
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