【BIS論壇 No.366】ニッポン沈没
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は1月11日の記事を紹介。『週刊ダイヤモンド』2022年1月15日号は「ニッポン沈没」の特集を組み、さらに1月11日付けの朝日新聞は「守勢の日本、IT競争対抗できず」「米巨大ITトップ10、日本トヨタ29位が最高」「日本企業の時価総額が海外勢に比べ、縮小している。これは日本の多くの企業経営者がこれまでリスクを避け、投資を控え、守勢に回った結果だ」と報じている。
一方、米国ではコロナ禍の下のデジタル化の進展で米巨大IT企業が上昇。アップルは時価総額が世界で初めて3兆ドル(約345兆円)を超えた。脱炭素の流れをつかんだ電気自動車(EV)のテスラも急成長している。かつて筆者が商社NY駐在中の1989年末には時価総額ランキングで日本の主要銀行は興銀の15兆円を筆頭に6位に8.1兆円の東京電力、8位のNTT 7.9兆円、9位のトヨタ、7.7兆円。10位の野村証券の6.7兆円以外はすべて日本の銀行が抑えていた。それが33年後の2022年1月7日には銀行は三菱UFJの9.1兆円のみが日本国内のトップ10に残り、その他はトヨタをはじめとする製造業と情報通信会社が占めている。銀行業務のデジタル化が遅れたことも伸び悩みの要因だと朝日新聞は分析している。このままではデジタル化や脱炭素の流れに乗って挽回できるのか、現状では悲観的だ。日本企業が成長力を取り戻し、時価総額を伸ばすカギは経営者がリスクを覚悟し、独自分野に投資することだ。これまで日本の多くの企業が給与削減や人減らしなどでコストを抑えて利益を確保。内部留保は増大したが、成長に向けた投資には及び腰だったと朝日新聞は報じている。
世界の時価総額ランキングではアップルが2022年1月7日時点で2.8兆ドルで1位、あとマイクロソフト、サウジアラムコ、アルフファベット、アマゾン、テスラ、メタ(旧・フェイスブック)、バークシャー・ハサウェイ、エヌビデイアと続き、台湾のTSMCは10位にランク。日本のトヨタは約37兆円で29位だ。あと日本企業はソニーグループで92位という情けなさで日本企業の衰退ぶりは目を覆うばかりだ。中国のIT大手テンセントは11位。韓国のサムスンは16位と日本企業をしり目に成長している。
今日、米国のアップル、マイクロソフト、アルファベットの3社だけで日本の全上場企業の時価総額の合計(約750兆円)を上回っているという。
日本企業はバブル崩壊で設備投資に後れを取り成長力が弱まった。政治や産業界、国民の意識が変わらないと日本企業が復活するのは厳しい。(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・藤戸則弘氏)との見方もある。しかし、日本衰退の遠因は1985年のプラザ合意で日本が米国に円の大幅な切り上げを要求され、それが日本衰退の遠因だとノーベル経済学賞受賞者のコロンビア大学の故ロバート・マンデル教授が話していたが、筆者も同感である。
それから35年後の今日、日本は米中経済戦争に巻き込まれ、はたまた憲法違反の敵基地攻撃のための米国製長距離ミサイルを買わされるようだが、そろそろ政治、軍事、経済的にも独立し、日本独自の国益を第一に行動すべき時にきているのではないか。熟考が肝要だ。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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