【BIS論壇 No.367】2022年の世界経済動向
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は1月17日の記事を紹介する。
コロナ変異株、インフレ、格差問題などで高まる不確実性
世界銀行は今月11日、最新の「世界経済見通し(GEP)」を発表した。この報告で、世銀は新型コロナウイルス感染症変異株による新たな脅威とインフレ率の上昇、債務、そして所得格差の拡大によって、世界経済は大幅な減速局面に入っていると予測している。
これらの要因が、新興国と途上国の回復を阻害する恐れがあると指摘。世界規模の財政面・金融面の支援縮小を受け、世界経済の成長率は2021年の5.5%から22年に4.1%、そして23年には3.2%へと大きく鈍化すると予測している。
新型コロナウイルスの新たな変異株であるオミクロン株の感染が急速に拡大していることから、短期的にはパンデミックによる経済活動の混乱が続く可能性が高いと予想。米国や中国をはじめ、主要国の経済の著しい減速にともない、新興国・途上国での外需の下押しを予測している。
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2022年の10大リスクこうしたなかで、オミクロン株の大規模な流行、サプライチェーン問題の長期化、インフレ圧力、さらに金融の脆弱性の悪化が世界の広い範囲で起こり、ハードランディングのリスクが上昇する可能性を指摘している。
新型コロナウイルス感染症、インフレ、施策の不確実性、さらに格差の拡大と安全保障上の問題が途上国に悪影響もたらす。世界経済を成長軌道に乗せるためには、世界レベルでの協調が必要だと強調している。
先進国の成長率は21年の5%から22年は3.8%、23年には2.3%まで減速すると見込んでいる。これに対し、新興国・途上国の成長率は21年の6.3%から22年は4.6%、23年には4.4%まで減速すると予測。世銀は23年までにすべての先進国でGDPは完全に回復するが、途上国ではパンデミック前のトレンドを4%下回り、さらに脆弱な国や紛争国では7.5%下回ると見込む。なかでも、インフレの上昇が低所得層の労働者に大きな打撃を与えるだろうと憂慮している。
途上国の持続的な回復の足かせとなる債務問題。とくに、コロナ後の世界の債務残高は過去50年で最高水準に達し、その解決にはG20の協調が大切だという。また、途上国が環境に配慮した強靭で包括的な開発を実現できるように、世界的な協力が不可欠と強調している。
さらに、パンデミックにより世界の所得格差が拡大。教育の混乱による人的資本の損失が波及的に広がる可能性を憂慮。各種改革の遂行、投資の改善と人的資本の向上、ジェンダー、気候変動問題に取り組むための改革が必要だと訴えている。
地域別の概要として、東アジア・太平洋地域の経済成長率は22年に5.1%と減速するが、23年までに5.2%に改善。ヨーロッパ・中央アジア地域は22年が3%、23年が2.9%に減速すると予想している。
ラテンアメリカ・カリブ地域は22年が2.6%と減速するが、23年に2.7%と若干改善。中東・北アフリカ地域は22年が4.4%、23年が3.4%に減速。南アジア地域は22年に7.6%まで加速するが、23年は6%に減速。サブサハラ・アフリカ地域は22年が3.6%、23年が3.8%に上昇する見込みだ。
このような状況下、日本はポストコロナの明確なグリーン戦略、DX戦略の策定が急務となっている。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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