2024年11月23日( 土 )

黒字化遠のく~福岡国際空港

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 福岡空港のターミナルビルと空港の一体経営を手がける福岡国際空港(株)は、完全民営化後1年でコロナ禍が直撃。早期の黒字化が困難な状況となっている。

地場連合で空港運営を受託

 福岡国際空港(株)は空港民営化にともない、2018年7月に設立された。従来からターミナルビル運営を行っていた福岡空港ビルディング(株)を子会社化して18年11月にターミナルビル運営を引き継いだ。19年2月に福岡空港ビルディングを吸収合併した。持株比率は福岡エアポートホールディングス(株)38%、NNR・MC空港運営(株)30%、チャンギエアポートインターナショナル(シンガポール)が21%。ほかに福岡県と九州電力(株)も出資している。

福岡国際空港(株) 株主構成 福岡エアポートホールディングスは旧福岡空港ビルディングの株主が福岡空港運営権取得を目指すために設立した地場連合で九電や西鉄らが出資して発足したもの。NNR・MC空港運営は西鉄のグループ会社。チャンギエアポートインターナショナルは空港の管理・運営を行う企業で、福岡エアポートホールディングス連合の一員として運営権公募に参加した。公募には大和ハウス工業(株)や東京建物(株)のグループも応募したが、利便性の向上や設備投資の総額などで他を上回り契約を勝ち取った。契約期間は30年間で不動産所有権を国が保有したまま運営権を支払う方式をとる。運営権対価総額は4,460億円に上るが、一時金200億円を払った後、毎年142億円を支払っていく。

 設立初年度の19年3月期決算は8カ月決算だったことやターミナルビル運営のみだったことで連結売上高は154億9,200万円にとどまった。一方で空港運営準備に係る準備費用がかさみ94億7,500万円の経常赤字となった。それでも旅客数は国内線、国際線とも過去最高の2,484万人を確保した。とりわけ国際線が9.2%の大幅増となり早期黒字化への機運が高まった。

コロナ直前まで好調維持

乗降客数推移
乗降客数推移

 19年4月よりターミナルビルに加え、滑走路など空港運営を開始。国際線は前年以上に新規・復活など路線を獲得したが、半導体原料の輸出管理が始まったことで夏以降は韓国線の利用客が減少した。それでも国内線はドル箱の羽田線などがけん引し20年2月までは前年を上回る旅客数で推移した。しかし新型コロナウイルス感染拡大で状況は一変。20年3月期の利用客は前年比約180万人減の2,303万人となった。業績面では売上高434億3,900万円を確保したが営業損益段階で黒字化には届かなかった。また運営権対価の負担が重く経常赤字は2期連続して90億円を超えた。

 21年3月期は年間を通して新型コロナウイルス感染拡大にともなう人の動きの制限の影響を受けた。国内線はGoToトラベルキャンペーンやターミナルビルリニューアルにともなう商業施設のオープンなどで回復した時期もあったが、利用客は前年比63%減の648万人となった。国際線は世界的な入国制限により99.7%減の1万人と実質的に市場消滅を余儀なくされた。福岡三越に出店していた空港型免税店「福岡デューティーフリー天神」を7月に閉店。同店を運営していた子会社は21年3月に清算した。売上高は66%減の146億1,200万円。営業赤字は139億9,800万円に拡大した。上期と下期2度に分けて支払う運営権対価142億円は23年3月への猶予を受けたが経常赤字は212億5,400万円に膨らみ債務超過に転落した。

 22年3月期の中間決算は前年同期よりも21%増収となったが20年3月期中間期の33%の売上高79億6,600万円にとどまった。営業赤字は57億2,000万円。前期同様に運営権対価の支払い猶予を受けるが経常赤字92億4,500万円となった。運営権対価については猶予だけでなく減免を求めていく方針だが、コロナ禍前でも黒字化は早くて25年3月期と見立てていたが、計画の見直しを迫られることとなった。

要約貸借対照表(連結)/既往の業績(連結)
要約貸借対照表(連結) / 既往の業績(連結)

 業績悪化にともない、複合施設の完成は26年3月期まで延期した。ただし、ターミナルビルはリニューアルにともない店舗が質量ともに強化された。また、天神から地下鉄でわずか11分という好立地である。空港運営部門の負担は重いが商業施設としては相応の条件を満たすだけにコロナ長期化に備えビジネスモデルの見直しが求められる。

【鹿島 譲二】


代 表 :永竿 哲哉ほか1名
所在地 :福岡市博多区大字下臼井782-1
設 立 :2018年7月
資本金 :178億5,000万円
業 種 :空港運営
営業収益:(21/3連結)146億1,200万円

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