2024年12月23日( 月 )

【経済事件簿】投資セミナーに利用されたのか 中間市とBGS プロジェクト(1)

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 コロナ禍に揺れた 2021年、度重なる陽性者数の増減に対し先行きに不安を覚えた人も数多くいるだろう。先行きへの不安・不満が漂えば、より活発化するのが“いい話”を盛り込んだ投資話。昨年、派手な演出と PR からひと際注目された投資事業がある。半沢龍之介氏による BGS プロジェクトだ。半沢氏は 21 年 4 月 21 日、福岡県中間市の一日市長に就任。
 一般人向けに行われた投資セミナーでは、半沢氏への信頼の証としてその様子が PR されていた。

BGSプロジェクトとは

Click holdings(株) 本社
Click holdings(株) 本社

    「21年末を期限とし、100億円の投資が集まったらその場で終了」というルールで始まったClick Holdings(株)(半沢龍之介代表)の「Be Gaming Stationプロジェクト」(以下、BGS投資事業)。

 その一環であるチェーンのない電動自転車「HONBIKE」事業が、クラウドファンディングサイトMakuakeで6億円以上を募り、サイト史上最高額を集めたことで注目を浴びた。

 これはもともと、中国のHONGJIの商品を半沢氏が日本で販売を始めたもの。HONBIKEは、東京・代々木体育館で行われた「東京ガールズコレクション2021 Spring/Summer」で、タレントのデヴィ・スカルノ氏によるプロモーションが行われ、各メディアが報道したことでより認知度が高まった。

 事業として1つの成果を出していると思われるBGS投資事業だが、セミナーの紹介者により利益が生まれるスキームや突如現れた“実力者”半沢氏に戸惑う声、仮想通貨を利用した事業スキームなど、その信憑性に疑問を抱く人は多い。実際に、「BGS投資事業は信用してもよいか」という問い合わせが複数届いている。そこで今回、約1カ月におよぶ調査(取材・聞き取りなど)の結果を複数回にわたって報告する。

危惧される事業スキーム

 前述したように、BGS投資事業はいわゆる“マルチ商法”のスキームを活用している。東京を中心に全国各地で週に複数回行われていたセミナーでも、マルチ商法にあたるということを講演者自らが説明していた。

 日本では、マルチ商法はたびたび問題にされてきた。化粧品を扱う多くの外資系企業が活用している。ざっくりといえば、「自らが一般の人に商品を売り、買った人が別の人に売ると最初の紹介者も儲かる」といったものだが、合法にあたり法的罰則はない。しかし、参加者や関係者、友人、家族などを巻き込むことも多く、ノルマ達成のために自費で商品を買い続けて破産する人が続出し、社会問題となったこともある。

 このようなマルチ商法の会員募集の多くは、“成功者”(お金持ち)の講演によるセミナーを舞台に行われる。また、近年増加している仮想通貨を利用した「詐欺師」とされる人物らも同様の手口を使うことが多い。

 最近では、仮想通貨を使った取引への投資を無登録で勧誘したとして、東京都で21年11月、玉井暁(あきら)容疑者らが逮捕されたことは記憶に新しい。玉井容疑者らは約650億円を違法に集めたとされており、その被害額の大きさから注目を浴びた。

 BGS投資事業をめぐり懸念されているもう1つの点が、仮想通貨の存在だ。日本ではおそらく仮想通貨について、詳細を語れる一般人は少ないだろう。「仮想通貨で大儲けをした」「今が流行りでチャンス」「乗り遅れるともったいない」という宣伝文句から、投資の1つと認識している人が多いのではないだろうか。

投資と投機の両面性

 補足すると、仮想通貨は投資ではなく、投機に近い。ビットコインを代表とするいくつかの仮想通貨が流通しており、市場価値の変動が激しいことが特徴の1つだ。

 日本では「自らの資本・資産を投入し、増やしていく=投資」と認識されがちだが、仮想通貨市場のように将来の価格変動を予想して、現在の価格との差額を利得する目的で行われる売買行為は投機となる。

 BGS投資事業には、投資と投機の両面性がある。BGS投資事業に参加する場合、現金で仮想通貨の口座を開き、仮想通貨イーサリアム(以下、ETH)を購入する必要がある。ETHでBe Gaming Coin(以下、BGC)を購入することで「オーナー権利」を獲得、BGS事業として生まれた利益の15%を各オーナーに向けて配当(ETHによる)していくというビジネススキームとなっている。

 つまり、配当がETHによって行われるため、オーナーが受ける利益はBGSが行う事業だけでなく、仮想通貨市場のETHの市場価格の影響も受けることとなる。

 次回は、BGS投資事業に関わる人物や団体について述べる。

(つづく)

【特別取材班】

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