2022年小売業界を展望(前)
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コロナ禍に翻弄された21年
2021年の小売業界は、2年続きのコロナ禍に翻弄されたと言ってもいいだろう。巣ごもり需要のメリットを受け続けた店もあり、その反動で前年割れの店も少なくなかった。しかし、それは従来通りの営業環境の変化による一喜一憂であり、M&Aも従来型の力関係によるものが大部分だった。
イオン九州とマックスバリュの統合は、まとめて大きくすることによる効果を意図したものだろうが、スケールメリットという果実をうまく収穫できるかどうかは不透明だ。ホームセンターやスーパーマーケット、GMSという既存型の合体に大きな効果は期待できない。新しい発想でユニークな分野を広げる努力が求められる。
消費者から見て「わざわざでも店に行きたい」感のない従来型の店舗の連合から、消費者が見出せるものはおそらく少ないだろう。その一方で、新たな動きも垣間見えた21年を振り返りながら、今年の小売業界を予測してみる。
西友とドン・キホーテ
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小売こぼれ話(15)ドラッグストアの懸念すべき動き(前)独特の販売、拡大戦略を展開するドン・キホーテ(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は、ユニーとの一体化や旧ダイエーの店舗跡などの活性化で注目を集めた。ところが、その経営に黄色信号が灯りつつある。
原因は統合したユニーの運営だ。完全子会社化したユニーは、いわゆる化石リテールのGMS。その主力は食品だが、ドン・キに卓越した食品運営のノウハウはない。やがてユニーという鎖の重さを実感することになるだろう。
さらに、コロナ禍の影響で先が見えなくなっているインバウンドの問題もある。全体の10%前後を占めるインバウンド売上の減少をどうカバーするかは、ドン・キにとって極めて深刻なテーマだ。
ユニーの主力である食品はもともと粗利益率が低い。粗利が低いため、より低い販売管理費で運営しなければならなくなる。
だが、食品の場合、一般管理費は概ね固定費となる。手っ取り早いのは人件費だが、人件費の削減はそのまま現場力の低下に直結する。それで失敗したのがウォルマートの西友だ。合理的なシステムの導入と同時に人員削減に走った結果、売り場のレベルが一気に低下し、期待した改善を手にできなかった。ここ数年は盛んに経営数値の改善をアピールしていたが、最終的には撤退を選択した。
それに見るまでもなく、GMSの運営は容易ではない。大量在庫と高粗利というGMSとは逆の経営手法で成功してきた流通の勝ち組、ドン・キによる今後のユニーの舵取りが注目される。
飽和による溶解は続くのか?
21年、最も注目すべきはコンビニの変容だろう。コンビニの真骨頂は、セブン-イレブンに象徴される24時間営業と定価販売だが、そのコンビニの柱が傾き始めた。
「24時間」と「定価」という縛りを外そうと、複数のフランチャイザーが訴訟を起こした。個人オーナーがチェーン本部を法的手段に訴えるのは異例であり、問題がいかに深刻かを物語る。
大きな理由は、人手不足とオーバーストアだ。それまで一貫して増加を続けてきたコンビニは、18年をピークに減少に転じる。もちろん、それまでにも大量出店の陰にその半数から同数の店舗閉鎖があったことは、コンビニの競争が今に始まったわけではないことを物語る。
そうした経緯を経て、店舗数が完全に飽和を迎えた今、団塊の世代の高齢化や若年人口の減少も加わり、これまで何とか経営を続けてきた店舗が先行きの見えない状況に陥っている。
コンビニの営業時間短縮と値下げは、今後訪れるさらに厳しい先行きを示してもいる。まず営業時間については、短縮する時間帯の客数が減るだけにとどまらないだろう。「開いててよかった」は、「いつでもどこでも自由に買える」ことにほかならない。それをなくすのは、お客の自由環境がなくなるということである。そして、それはほかの時間帯にも影響する。効率が効果に悪影響を与えるのだ。
(つづく)
【神戸 彲】
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