【BIS論壇 No.369】日米首脳会談について
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は1月23日の記事を紹介する。
日米首脳は1月21日オンラインで80分にわたり協議を行った。日米双方だと各国40分、通訳を入れると各首脳の発言は20分となる。20分でどれだけ、深みのある会談がなされたのだろうか。しかし新聞報道によると、「対中国、日米連携深まる」、「経済版2プラス2新設、経済安保、深化で一致」、「バイデン大統領初来日」、「クアッド抑制力強化狙う」(朝日新聞1月23日)、「日米豪印、日本で首脳会談」、「年前半、バイデン氏来日」、「日米、経済2プラス2新設」、(日経1月22日夕刊)、「日米、経済安保でも連携」、「2プラス2新設、輸出管理などズレも」、「日米の連携強化で世界の課題へ対処を」(日経1月23日)などメディアでは日米関係強化への期待をはやし立てている。
日米首脳協議の主な内容は「ウクライナ情勢にはいかなる攻撃にも強い行動をとる」、「尖閣に関しては日米安保条約第5条の尖閣適用を確認」、「台湾に関しては平和と安定の重要性を強調」、「日本の防衛力に関しては抜本的な強化の決意を岸田首相が伝達」、「クアッドに関しては22年前半の首脳会談を日本で開催」、「経済協力については閣僚レベルの協議の立ち上げで合意」、「在日米軍のコロナ感染拡大対策で協力を継続」、「核軍縮は核無き世界に向けてともに取り組むと確認」と前向きに報道。これに対し、識者の意見は「話せる相手日本のみ」(前嶋和弘・上智大教授)、「敵基地攻撃米が期待」(小谷哲男・明海大教授)、「通商政策で妥協点を」(大和証券チーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏)「幅広い地域連携への契機に」(米ブルッキングス研究所・ミレヤ・ソリス氏)などと評価。この中で特に問題にすべきは敵基地攻撃は日本国憲法との整合性もあり、慎重に検討すべきであろう。
北京語言大学のフアン・ジン教授は「内政優先の米中は対立緩和遠く」と米中の状況が対照的になれば世界情勢はより不確実性を増す」と憂慮している。(日経1月22日)
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【BIS論壇No.363】米中対立と日本の安全保障岸田首相は「対中国で緊密協力」「包括的に経済協力」と述べ、今後、外務+通産閣僚レベルの2+2の日米トップで包括的な日米経済協力を推進するとしている。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けてインフラなど同盟国との協力を深化させると首相は発言しているが、そこには中国の「一帯一路」への対抗意識もあるようだ。
古来経済の大動脈だったシルクロードの交易の衰退で西ローマ帝国は滅びた。(井上文則・『シルクロードとローマ帝国の興亡』(文春新書 2021年)。しかし中国の習政権は陸と海のシルクロード再構築を目指し、一帯一路戦略を推進中である。ユーラシア・アジアは21世紀の発展地域である。1980年代後半に日本は米国からの円切り上げ、構造協議要請を受け入れ、以来30年間経済は低迷を続けている。35年後の今また、クアッドとの協力、敵基地攻撃準備で長距離ミサイルなど防衛武器の対米輸入で日本の最大の貿易相手国の中国と敵対することは賢明とはいいがたい。岸田内閣の慎重な対応が強く求められている。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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