2024年11月22日( 金 )

みずほ、露骨な「組織防衛」人事~首脳を旧3行で分け合う(前)

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 「大山鳴動して鼠一匹」。大騒ぎした割には、期待はずれの結果に終わる、という意味。(株)みずほフィナンシャルグループ(FG)のトップ人事をめぐる騒動は続発したシステム障害の責任を取って3首脳が一斉に退陣する異例な事態に。蓋を開けてみると、FG社長は旧(株)日本興業銀行出身、FG会長は旧(株)第一勧業銀行出身、(株)みずほ銀行頭取は旧(株)富士銀行出身と、旧行のバランスを重視した布陣となり「組織防衛」の意図が透けて見える。

誰もが予想した「興銀1強支配体制」の解体

 みずほフィナンシャルグールプ(FG)の新体制は、旧3行で分け合った。
■みずほFG社長
坂井辰史(旧・興銀)→木原正裕(旧・興銀)
■みずほFG会長
佐藤康博(旧・興銀)→今井誠司(旧・第一勧銀)
■みずほ銀行頭取
藤原弘治(旧・第一勧銀)→加藤勝彦(旧・富士銀)

 みずほFGのトップ人事のポイントは、興銀支配が続くことになったということだ。

 3首脳の同時退任によって「旧興銀一強支配体制」が崩壊した、と金融界は一時、騒然となった。経済メディアには、「みずほのシステム障害は『悪しき旧興銀』による人災」「『旧興銀支配10年』なれの果て」といった刺激的な見出しが躍った。

大手町タワー イメージ    後任候補については、さまざまな推測が飛び交った。それこそ「百花斉放」のありさま。

 旧興銀出身の佐藤康博会長の後任に、外部から招聘する案が浮上した。2003年に実質国有化されたりそなホールティングスの会長に、JR東日本副社長だった細谷英二氏が就き、再生させたことを想定している。

 同じく旧興銀出身の坂井社長の後任候補について、各メディアが有力候補の筆頭に挙げていたのが、グループ内の(株)オリエントコーポレーション社長・飯盛徹夫氏である。みずほFGでポスト佐藤の後継者として下馬評にのぼっていたが、富士銀出身者ということでみずほ信託銀行(株)社長に出され、下馬評にもあがっていなかった興銀出身の坂井辰史氏が社長に就いた。飯盛氏は20年4月、旧第一勧銀が根城としていたオリコの社長に転じた。

 飯盛氏のFG社長が実現すれば、捲土重来となる。だが、すでに、みずほ銀の次期頭取に就くことが決まっている加藤勝彦氏は同じ旧富士銀の出身。持株会社と銀行のトップを旧富士銀が占めれば、旧富士銀の復活になる。「FGの執行部に多い旧興銀勢との一波乱は免れない」とみられた。

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 さまざまな名前が浮上したが、次期FG社長候補に興銀出身者を挙げたメディアは皆無だった。みずほの再生は、「興銀一強体制」の解体から始まるということが、共通した認識だったからだ。

興銀出身・木原新社長は下馬評にものぼらず

 蓋を開けてみると、坂井社長の後任には、旧興銀出身の木原正裕氏が昇格した。FGのトップは、佐藤康博氏、坂井辰史氏、木原正裕氏と3代続いて興銀出身者がなる。興銀支配は変わらない。これがみずほトップ交代の最大のサプライズだ。

 下馬評にも挙がっていなかった木原氏の昇格に、あっけにとられたのは、外野席のメディアだけではない。内部からも驚きの声が挙がる。

 〈「新社長の名前は聞いたことがない。少なくとも、若い頃からトップ候補だった人ではない」。みずほフィナンシャルグループ(FG)のOBは、次期トップの名前を知ってそう口にした〉

(『東洋経済』ONLINE22年1月19日付)

 木原氏は、1989年に日本興業銀行に入行。米国ロースクールに留学し、みずほ証券(株)のリスク管理や財務企画部門を歩いてきた。本流の銀行からすると証券は傍流だ。しかも、執行役から、2階級特進で大抜擢されたのだ。

 なぜ、木原氏なのか。日本経済新聞電子版(22年1月19日付)が舞台裏を報じた。

 年末までに、興銀出身の木原正裕執行役、第一勧銀出身の今井誠司副社長、富士銀出身の梅宮真最高財務責任者(CFO)の3人に絞られた。

 今井、梅宮両氏はそれぞれ86年、87年入行で坂井体制では主要ポストに就いている。システム障害の再発防止に向けて先頭に立つ人物として疑問が残る。木原氏は平成入行で2人より若い。

 「心機一転、みずほを立て直すには若返りがふさわしい」。木原氏に議論が収束した理由を関係者の話として、日経は伝えている。

 日経は、こうも報じる。〈指名委が興銀出身者の社長就任が3代連続になることや、首脳ポストを旧3行で分け合う構図になることを考慮した節はない。みずほ幹部は「そういう批判は出ると思ったが、人物本位で選んだ結果を覆すほどではなかったということだ」と明かす〉

 このコメントには、思わずのけぞった。「人物本位」で選んだら、社長は興銀出身者になり、首脳ポストを旧3行で分け合うかたちになりました、と言っているのだ。これを額面通り受け取る向きは皆無だろう。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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