2024年12月04日( 水 )

西鉄高速バス運賃の値上げ(前)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

 西日本鉄道(株)は1月20日、高速バスと路線バスの一部路線の運賃を3月に値上げすると発表した。値上げ幅は高速バスが平均で12%、路線バスが平均で13.5%となる。値上げの理由として、新型コロナウイルスの影響で利用者が減少していることを挙げている。

コロナ禍で利用者が減少

 合わせて発表した鉄道・バスの利用状況は、1月10~16日の速報値で、鉄道(天神大牟田線)がコロナ感染拡大前の2020年の同期比で平日80%、路線バス(全地区)が平日75%だった。林田浩一社長は、福岡県でまん延防止等重点措置が発令されれば、「10%ほど利用が減ることは避けられない」とした(1月27日~2月20日まで発令)。

高速バスの値上げ

西鉄高速バス イメージ    高速バスは3月1日から8路線の運賃を値上げする。福岡~熊本間の「ひのくに」は片道2,280円が2,500円、福岡~北九州間の「ひきの」「なかたに」「いとうづ」と博多系統の路線は片道1,150円が1,350円となる。福岡~行橋間は片道1,680円から1,950円に、福岡~下関間の「ふくふく」は1,570円から1,700円に値上げとなる。

 通勤・通学客が多い福岡~直方間は片道1,150円から1,350円に値上げされ、福岡~佐賀間の「わかくす」は1,050円から1,100円に値上げされる。福岡空港~佐賀間は1,260円から1,300円と、わずかながら値上げとなる。

 福岡空港~久留米線の基本運賃は変わらないが、2枚回数券が値上げとなる。北九州地区では高速バスを通勤・通学で利用する人が多いため、回数券も充実していた。

値上げの一方で弾力的な運賃設定も

 今回の値上げにともない、回数券は一部路線で廃止または値上げとなるが、一部の路線ではスマートフォンのアプリで購入すれば値引きする制度を新設する。また、福岡~宮崎間を結ぶ路線は片道の運賃が4,710円だったが、需要に応じて3,500~6,000円の幅で変動する新運賃制度を導入する。

 この運賃制度の導入により、閑散期は2割引きになる一方で、繁忙期は3割増しになる。福岡~宮崎間の「フェニックス」は、西鉄以外に宮崎交通、九州産交バス、JR九州バスの4事業者で共同運行を実施している。

 福岡~宮崎線では従来の回数券類やウェブ割引運賃が廃止され、「直近の予約状況に応じて、より幅広い価格帯で柔軟に運賃を変動させる」という“ダイナミックプライシング型”運賃が導入される以外に、新たに65歳以上が対象の片道4,500円の「シニア割」運賃を設定する。

 なぜ、このように時間帯や便ごとに運賃が変わるダイナミックプライシングが導入されるのかといえば、便ごとに乗車率が異なっていたことが挙げられる。従来は混雑する便と閑散とする便に格差があり、ダイナミックプライシングを導入することで、混雑している便から閑散としている便へ利用者をシフトさせ、乗車率を平準化する狙いがある。それ以外にも、福岡~宮崎間の高速バスは10年以上昔と比較すればディスカウントされており、混雑している便などについては昔の運賃水準に戻すことも目的としている。

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 福岡~岡山間の「ペガサス」でもカレンダー運賃が導入され、片道7,540円の運賃が6,600~9,100円というように、状況により変動するようになる。カレンダー運賃の導入については、季節による変動に合わせてカレンダー運賃を設定しようとは考えていない。ゴールデンウィークや盆、正月などの繁忙期や、通常期においても曜日ごとの需要に差があるため、設定すると説明している。

 利用状況は月~木と比較すると、金~日の需要が高くなる傾向にあるため、このような需要の多い時期は通常期でも割高な運賃設定を行うという。

(つづく)

(後)

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