SBグループ、英アーム売却断念
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22年度中の米国上場へ
ソフトバンクグループ(株)(東京都港区、孫正義)は8日、同社子会社・英国アームの全株式を米国の半導体メーカー「エヌビディア」に売却する契約を解消すると発表した。契約締結時に同社が売却対価の前受金として受領していた12.5億ドルについては、契約条項にもとづき返金の義務はなく、22年3月期第4四半期に利益として計上。今後、アームを2022年度中に米国で上場させる準備を進めるとしている。
同社は16年9月にアームを約310億ドルで買収。当初はアーム単独での上場を計画していたが、財務改善のため、20年9月にアームの株式を最大400億ドルでエヌビディアに売却すると発表していた。
同社の孫正義会長兼社長は8日に行われた22年3月第3四半期決算説明会で、「1年半前に我々は4.5兆円の資金化プログラムを発表。そのプログラムの一環として“泣く泣く”アームを手放すことを決めた。しかし、単純に手放すというのではなく、急成長を遂げるエヌビディアと合体させれば『鬼に金棒』になる。その筆頭株主になることを願って売却を決めた」と説明した。
しかし、その後、GAFAに代表される主要なIT企業、アメリカ政府、イギリス政府、EU各国政府の猛反対に遭う。孫氏は「通常、独占禁止法で合併を阻止する場合、同じ業界、たとえばエンジンをつくっているA社とB社が合併する場合、エンジン業界におけるシェアが大きくなりすぎるので独禁法に抵触するが、アームとエヌビディアはエンジンとタイヤぐらいつくっているものが違う。違う事業を手がける2社の合併を独禁法で阻止するのは初めてのケース。各国政府、企業が2社の合併をそれほどまでして阻止したかったかというと、アームがIT業界にとって欠かすことのできない会社の1つだったからだ」と主張。「エヌビディア側も合併を行いたいという気持ちは強かったが、阻止する動きがこれほど強くては承認を得られないだろうということで今回の契約解消に至った」としている。
アームはスマホ革命を牽引
ソフトバンクグループの今回の決定をめぐり、エヌビディア創業者でCEOのジェンスン・ファン氏は「アームには明るい未来があり、私たちは今後数十年にわたり誇りあるライセンシーとして支援し続けます。アームはコンピューティングにおける重要なダイナミクスの中心にいます。私たちは1つの会社にはなりませんでしたが、アームと密接に連携していくつもりです。孫氏がアームに行った多大な投資により、ArmCPUはクライアントコンピューティングだけでなく、スーパーコンピューティング、クラウド、AI、ロボティクスにまで活用の範囲が広がりました。アームは次の10年で最も重要なCPUアーキテクチャになるでしょう」と述べている。
アームの今後について孫氏は、アームのCPUは世界中のほとんどのスマホで使われており、スマホ革命を牽引してきた。今後は自動車、メタバースなどで需要が急増すると語り、「第2の成長期に入る」としたうえで、「アームは半導体業界市場最大の上場を目指す」と強調した。
なお、8日に発表されたソフトバンクグループの22年3月期第3四半期の決算によると、売上高は4兆5,808億4,000万円(前年同期比10.7%増)、当期純利益は3,926億1,700万円だった(同37.4%減)。
【新貝 竜也】
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