「知の巨人」2名による対談
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NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、副島隆彦氏と佐藤優氏による対談本が刊行されたことに触れた、5月23日付の記事を紹介する。
知の巨人」「インテリジェンスの巨人」2名による対談、副島隆彦氏と佐藤優氏による『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(日本文芸社)が刊行された。「知の巨人」による対談はこのうえなく面白い。面白いと言っては失礼だが、思わず引き込まれる。
本の紹介にはこうある。「世界と日本の行方が見てくる!世界革命を目指すイスラム国の脅威、ウクライナ政変で見えてきた世界大戦の予兆……。目下、迫り来る危機に、われわれはどう立ち向かうのか!? 日本を代表する知性である“インテリジェンスの達人“佐藤 優と“政治・経済の予言者”副島隆彦が、国際情勢の地殻変動をズバリ解読。メディアが伝えない「世界の真実」を縦横無尽に語り尽くす。世界で起きていることは、日本でも必ず起きる!」
出版社による本書の紹介に偽りはない。いまこの世界で起きていること。私たちが知っておかねばならない事実、真実がある。しかし、日本のメディアは真実を何も伝えない。
メディアが伝えるのは事実や真実ではない。メディアを支配する権力者=支配者が人民を操るために流布する「作られた情報」「捏造(ねつぞう)話」だけなのだ。
塩野七生氏がルネッサンスについて、「ルネッサンスとは一言でいえば、すべてを疑うこと」と述べたが、私たちが真実を知り、真理を探求するには 、「すべてを疑うこと」が必要不可欠である。
二人の「知の巨人」の話には深い奥行と強靭な説得力がある。だから、思わず引き込まれる。しかし、だからこそ、本書の読者は、重要な戒めをもって本書を読み進めなければならない。その戒めとは、「自分の判断を持つこと」である。筆者の深い知識、鋭い洞察力を前にすると、読者は完全な無防備状態に陥る。その結果、すべてを受け容れる全面降伏状態に陥りやすい。しかし、それでは本書を読む意味、価値が半減されてしまう。二人の偉大な知識人の言説を熟読したうえで、自分の判断、自分の見解を持たねばならない。そのことによって、存在する問題の意味付けがより鮮明に見えてくるのである。
副島隆彦氏と佐藤優氏の精力的な言論活動は当代随一のものと言ってよいだろう。広範な分野にわたって時機を逃さない核心を衝く言論活動を展開され続けている。副島隆彦氏は本書の刊行に先立ち、KKベストセラーズから『余剰の時代』を刊行されている。副島氏が「諸思想の冥界巡り」と表現されるように、同書はヨーロッパの政治思想の流れを紐解く学究の書でもある。
中心に置かれる考察のテーマは「人権思想」である。副島氏は自然法(バーキアン)と自然権(ロッキアン)の巨大な対立がヨーロッパ近代の政治思想=法思想の対立軸であると指摘する。そして、自然法の思想がアメリカに渡って保守の思想になったとする。自然権と、自然法という考え方は似ているが全然違うと副島氏は指摘する。自然法の思想は永遠の保守の思想であり、自然界を支配している自然の法則に人間もまた従うとするものである。人々を助けることなんかできない。だから黙ってじっと見ている、という思想、成熟した大人の思想だとする。
そして、自然法にも対立する位置に存在するのがPositive Law=人定法派「リバータリアン思想」であり、副島氏はここに所属する。リバータリアン思想を一言で表現すれば、「自分のことは自分でやれ。自分の力で自分の生活を守れ」という思想であるとする。『崩れゆく世界』を十分に理解するためには、『余剰の時代』を読まれるのが良いと思う。
良書というのはありがたい。最高の頭脳、最高のインテリジェンスに、いとも簡単に接することができるのである。お金の使い方として最高の方法であることは間違いない。※続きは5月23日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1151号「ウクライナ・中東の混乱が世界戦争の引き金になる」で。
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