懸念されるロシア発の世界経済危機(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏ウクライナに侵攻したロシアに対し、西側諸国は前例がないほど強力な経済制裁を科しているが、ロシアは今のところ何とかデフォルトを回避している。
西側諸国は経済制裁として国際決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの一部銀行を排除したり、ロシア中央銀行の外貨準備金を凍結させたりした。ロシア中央銀行の外貨保有高は約6,430億ドルで、そのうち60%は西側諸国の中央銀行(2,850億ドル)および商業銀行(1,030億ドル)などに預金および証券として預けられ、運用されていた。しかし、今回の経済制裁により、約半分の資産が凍結されることとなった。
ロシアに課された経済制裁はイラクやアフガニスタン戦争以降、相手国を圧迫する有効な手段として用いられてきた。ロシアへの今回の経済制裁はロシアの通貨ルーブルを暴落させただけでなく、国債の暴落など、ロシア経済に甚大なダメージを与えている反面、「返り血」として世界経済にもただならぬ被害がもたらされることになるのではないかと懸念されている。
今回は西側諸国の経済制裁が、ロシア経済と世界経済にどのような影響を及ぼすのかについて考えてみよう。
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SWIFT排除のロシア 事実上のデフォルト(前)ロシアは天然ガス、原油、アルミなど豊富な資源に恵まれた国で、原油高が続いていたこともあり、近年は経済が比較的安定していた。また、世界的に低金利時代が続いていたので、利回りの高いロシア国債は西側諸国の投資銀行から人気があった。
現在、ロシアが抱えている外貨建て国債の合計は15本で、総額は約400億ドルに上る。ウクライナ危機前の段階では、そのうち200億ドル前後をロシア国外の投資ファンドと資産運用会社が保有していた。ところが、西側諸国の経済制裁により、ロシアはすでに国際金融資本市場から閉め出されたため、ロシアの通貨であるルーブルは暴落し、国債も暴落した。自国通貨のルーブルが暴落しても、ロシア中央銀行は外貨準備高が凍結されているので、為替介入もできず、ロシア政府は打つ手を失っている。その結果、ロシアは借りた債務を期限まで償還できないことで発生するデフォルトを懸念されるまでになった。
ロシアは3月末までに外貨建ての債務を返済し、何とかデフォルトを回避しているが、4月4日に償還期日を迎える年内最大規模の額面約20億ドルの返済を控えており、その返済ができるかどうかに注目が集まっている。しかし、それを無事償還したとしても、まだ償還はいくつもあり、問題は山積している。
ロシアは1998年にも通貨危機によるデフォルトを経験している。原油価格が低迷しているなか、米国が利上げに踏み切った結果、やむを得ずロシアも政策金利を大幅に上げたためロシアの国債が暴落。金利が上がると、国債の価格は暴落する。ロシア国債を大量に抱えていた米大手ヘッジファンドのLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が破綻に追い込まれ、それを引き金にロシアはデフォルトに陥ったのだ。
(つづく)
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