ウクライナ危機、大統領夫婦関係から読む米ロの思惑(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸 氏ウクライナ危機が起こるなか、これからの世界はどうなるのか。政治指導者や経済界の大富豪に寄り添って、ともに歩み、彼らを支え、操る夫人や愛人との関係から、世界情勢の裏側を解き明かした『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』の著者である浜田和幸氏に、今後の国際動向について話を聞いた。
米国とロシアの代理戦争
──ロシアによるウクライナへの侵攻は、米国とロシアの代理戦争とも言われています。ウクライナ危機はバイデン大統領夫妻にとって、どのような思惑がありますか。
浜田和幸氏(以下、浜田) 米国では貧富の差が拡大し、人種問題も激化するなか、バイデン政権の人気が伸び悩んでいます。バイデン大統領は、今秋の中間選挙や2024年の大統領選での当選は難しいのではないかと言われており、形勢を逆転するために、強いリーダーとしての存在感を国内外に示す必要に迫られています。
これまでは米国にとっての最大の脅威を中国だと捉えて、中国が世界の工場となって米国の雇用を奪い、知的財産権を侵害しているとアピールし、米国・オーストラリア・インド・日本の4カ国の枠組み「クアッド」で中国包囲網を築こうとしましたが、中国はしたたかでバイデン大統領が思ったようにはいきませんでした。
一方、ロシアのプーチン大統領は、米国から制裁を受けているロシアと中国が協力して新しい経済圏をつくり、ドルに代わるデジタル通貨を普及させることを目指しています。豊富な天然資源をもつロシアが中国と手を結べば、世界のリーダーとして米国の立場が厳しくなるとバイデン大統領は懸念してきました。
ロシアからドイツに天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストローム2」が昨年完成しましたが、欧州が天然資源をロシアにあまり依存しすぎると、米国との関係がぎくしゃくするため、米国はロシアを欧州から切り離したいという思惑が強くなってきました。そこでロシアと欧州の中間にあり、旧ソ連であるウクライナに注目したのです。
ウクライナのゼレンスキー大統領は欧州との関係を強化し、北大西洋条約機構(NATO)やEUに加盟したいと考えていますが、そうなると核兵器やミサイルがロシアの玄関先のウクライナに直接配備されるため、ロシアにとっては脅威です。そこで今回のウクライナ危機では、東部ドネツク州に住むロシア系住民をウクライナ政府による虐殺から救うことを名目にしてロシアの攻撃が始まりました。
一方、バイデン大統領は、ロシアとウクライナの対立が激化することを見越しており、ロシアを西側との戦いに引きずり込み、SWIFTからの排除や天然資源の輸入禁止など経済制裁を強めることで、プーチン大統領のやり方を抑えようとしています。
バイデン大統領をそばで支える「ディープレディ」、妻のジル夫人は認知症気味のバイデン大統領が演説する際のサポート役を演じています。
バイデン大統領はNATOの最前線であるポーランドを訪問した際に、プーチン大統領を「殺人的独裁者で、権力の座にとどまることがあってはならない」と言ったり、ポーランドに進駐している米軍を慰問したときには、「米軍は間もなくウクライナに行き、状況を目の当たりにするでしょう」という米国の公式見解とは異なる発言をしたりしました。ジル夫人は大統領の言動をフォローすべく、尻ぬぐいに右往左往しています。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)は、2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。最新刊は、政治指導者や経済界の大富豪と夫人や愛人の関係から、世界情勢の裏側を解き明かした『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』(ワック)。関連記事
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