韓国の半導体産業 弱みはファブレス(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏存在感が薄い韓国のファブレス企業
ファブレス市場における韓国企業の存在感は薄い。英調査会社「オムディア」によると、世界のファブレス市場で韓国の市場シェアは1.5%で、米国の56.8%や台湾20.7%と比べると、格差がかなり大きく、中国の16.7%にも大きく引き離されている。サムスン電子、SKハイニックスなど、メモリ分野における韓国企業は世界の強者だが、ファブレス分野においては、存在感がまったくないと言っても過言ではない。なお、韓国のファブレス企業のなかで国内1位のLXセミコンの売上高は、1兆8,988億ウォンで世界ランキング13位である。
しかし、主要アイテムが単価の低いディスプレイ駆動チップであるため、今後の成長には限界があるとされる。数社は100億円くらいの売上高を上げているが、その他は規模の小さい中小企業で占められている。
世界のファブレス企業が活況のなか、韓国のファブレス企業の業績は低迷している。2009年に200社だったファブレス企業は、2020年には70社になり、会社数も3分の1に減少している。なぜかというと、世界的に半導体産業が成長を謳歌しているなか、ファンウンドリに発注が増加し、ファウンドリ企業が良い案件を中心に受注に応じているからだ。すなわち、設計したチップを生産して始めて売上が立つが、少量の発注は後に回され、なかなか生産する機会すら得られない状況である。
半導体産業は半導体をまず設計し、それをファウンドリに委託生産を依頼し、チップが生産されたら、家電メーカーや自動車メーカーなどに納品する流れになっているが、韓国はその間、半導体の生産には力を入れてきたが、産業の川上である設計企業の育成を疎かにし、現在のような状況となった。今からでも政府と産業界が協力して、半導体の生態系を造成しないと、「韓国の半導体競争力を維持できなくなる恐れがある」と専門家は指摘している。
台湾は設計からファウンドリ、後工程のパッケージングまで競争力の強化に急いでいるし、米国も設計では世界トップの力をすでにもっているので、インテルのファウンドリ事業への投資が実を結び、軌道に乗った場合、米国企業であるインテルに発注する方針をとれば、サムスン電子も不利な立場に立たされることになるだろう。
サムスン電子はメモリ偏重の問題点を克服するために、非メモリ分野でも世界1位になるという目標を掲げている。しかし、設計人材の育成なしには、その目標は達成が困難かもしれない。また中小規模のファブレス企業には初期に発生する高い費用や販路確保の難しさなど、山積している問題をどのように解決していくかが課題である。設計人材は短期間には育たない。長期的な計画とビジョンをもってファブレス市場を育てることが半導体産業の競争力強化につながる。先行組の米国、台湾、それを追う中国、それから日本、韓国が今後どのような対策を講じていくのか、今後も目が離せない。
(了)
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