洋上風力、三菱商事の落札でコスト激減(前)
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三菱商事(株)と中部電力子会社の(株)シーテックのコンソーシアムが昨年12月、経済産業省と国土交通省の再エネ海域利用法による秋田県と千葉県の3海域の着床式洋上風力発電プロジェクトを落札した。これらの固定価格買取制度(FIT)による買取価格の最安値は11.99円/kWhとなり、コストが課題とされてきた洋上風力発電で「価格破壊」が起こった。
洋上風力発電の「価格破壊」
3海域の着床式洋上風力発電プロジェクトの詳細は以下の通り。
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実践的な脱炭素論~日本の再エネ普及の現状と展望(前)経済産業省や国土交通省、関連企業、有識者からなる「洋上風力の産業競争力強化のための官民協議会」は2020年12月15日に第二回が開催され、「洋上風力産業ビジョン(第1次)」のなかで「2030年にまで1,000万kWの洋上風力の導入」「着床式発電コストを2030~35年までに8~9円/kWhにする」という目標を設定している。(一社)日本風力発電協会国際部長・上田悦紀氏は「洋上風力発電は、今回の入札の買取価格の最安値が11.99円/kWhとなっており、8~9円/kWhの目標をほぼ達成できるメドが立ちました。もはや高い再エネとはいえないでしょう」と語る。
コストダウンの理由は?
入札価格のコストダウンが起こったのは、(1)大規模な洋上風力発電を複数拠点に建設する量産効果、(2)建設時にどのようなリスクがあるかわからないとコスト増につながるため、仕様や構造を工夫してリスクを明らかにしたことが大きい。
(1)大型風車を用いた量産効果
洋上風力発電では、まず大型風車を調達できることがコストダウンになる。「風車の価格より建設費の比率のほうがずっと大きいため、小型風車を多く建設するよりも大型風車を少ない数で建設する方が、全体のコストは削減されます」(上田氏)。
今回の入札で、三菱商事のコンソーシアムが採用したのは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)製の現時点で世界最大の商用風車「Haliade-X(ハリアデX)」だ。風車の規模が12.6MWと大型化したため、経済性が上がり建設コストが大きく下がった。GEのほか、シーメンスやベスタスなどほかのメーカーも大型風車を販売しているが、今回の入札の日程では、GE製を採用することで最も大きな風車を確保することができた。加えて三菱商事は、3海域でGE製の大型風車134基を用いる。風車100体以上を一度に発注することで、調達コストが下がることが見込まれる。
今回の入札では運転開始時期が指定されていないため、各事業者の示した運転開始予定日は2025~32年となったが、三菱商事の運転開始時期は2028年9月~30年12月と遅めである。洋上風力発電の風車の規模は年々大きくなっており、時期が遅くなると、より大きな風車が実用化されるため、建設費は下がる。日本における港湾や建設船等の関連インフラの整備も進む。加えて、その時期までの欧州での設置実績を生かすこともできるだろう。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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