“米国衰退論”誤りのみならず罪づくり(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2022年4月18日の「“米国衰退論”誤りのみならず罪づくり」を紹介。米国国力の圧倒的優位
そうなると米国の圧倒的優位性が浮かび上がってくる。米国は世界最大の石油ガス産出国かつ純輸出国である。エネルギー価格上昇は国全体ではマイナスではない。またトウモロコシ、小麦、大豆など世界最大の穀物輸出国でもある。実際、年初来SP500株価指数が7.8%下落しているなかでエネルギーセクターの株価は43.7%、農産物セクターは43.4%と突出して上昇している。
製造業の衰退が強調されるが、先端産業での競争力は圧倒的である。中国を除く世界のインターネット・サイバー空間を米国のFANGM5社が支配しており、その技術力イノベーションの力は他国を寄せ付けない。また基軸通貨ドルを通して世界の金融を支配している。ロシアはそのくびきから逃れるために人民元と金保有を大きく高めたが、米、欧、日、英の中銀の連携によりその外貨準備の約半分は凍結されてしまった。
米国の7,782億ドルの軍事予算は、世界第2位の中国の3倍、ロシアの10倍と圧倒的(2020年)で、正面対決すればどの国も敵ではない。世界大戦への展開を回避するために正面からウクライナ支援をしていないが、それは米国が弱いからではない。批判はあるものの、米国は世界最強の民主主義国、人権尊重国であり、大半の避難民が望む最後の目的地は米国である。そこには他国にはない機会と夢がある。米国の政治リーダーのなかには驚くほど東欧からの難民やその子弟が多い。
露中の跳梁は“力の空白”を生んだ米国外交の失敗、米国力の低下ではない
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懲罰的円高から恩典的円安の時代へ(前)この米国が衰退しつつある大国であるかのようなイメージで捉えられ、それを信じたプーチンがウクライナを侵略したり、習近平が覇権挑戦を試みたりしているが、それはシンプルに間違いである。米国の地政学的プレゼンスの低下は、対テロ戦争が手詰まりになったことから始まった。オバマ氏が核廃絶を標榜し、世界の警察官をやめると宣言したことで、「力による外交」を放棄したと誤解された。
続くトランプ政権はアメリカファーストを唱えて自国中心主義に回帰し、昨年バイデン政権は何も得ないままにアフガンから撤退したことで、世界に大きな力の空白が生まれたことに疑いはない。習近平の南シナ海専横もプーチンのウクライナ侵略もそれにつけ入ったものであることは明らかである。それは米国外交の失敗であるが、米国の力の低下によるものではない。
ウクライナ戦争は世界リベラルデモクラシー秩序再構築の突破口に
ウクライナ戦争により、より大きな脅威が誰の目にも明らかになり、米国国内の保守派対左翼リベラルの対立は小異であることがはっきりした。今年11月の中間選挙などを経て、理想主義リベラルに偏った米国世論は再び現実主義に振れていくだろう。ドイツのパシフィズム(平和主義)からの転換、フィンランド、スウェーデンのNATO加盟意向など、自由民主世界のベクトルもそろっている。力による現状変更を許さない世界秩序の再構築に向けて、かつてないほどに求心力が高まるのは必至である。
世界の自由主義秩序に疑問符を挟んだり、中ロのような米国衰退説を唱えたりすることは、正しくないし、望ましい態度でもないことを強調しておきたい。
(了)
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