【福岡IR特別連載80】和歌山は妥当な判断、長崎はさらに愚かな判断
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ハウステンボスは閉鎖させられない
和歌山IR(統合型リゾート)の国への区域認定申請が20日、同県議会で否決され、事実上崩壊した。一方、同日、長崎IRは同県議会で大多数の賛成により可決された。マスコミ各社は、和歌山県を敗者、長崎県を勝者のごとく報道した。また、和歌山県の判断について、「ギャンブル依存症を理由にする反対派」の勝利のように扱っている。
両者共にIRの採算性が認められない「机上の空論」であり、資金が付かない。この点を踏まえて和歌山は妥当な判断を行ったが、長崎は表面だけを繕い、県議会が不適切な判断を下した。メディアの取材に対し、松野官房長官は「個別の案件についてはコメントできない。今後、本件に期間の定めはないので、これらを十分に検討させていただきます」と話している。
「眼光紙背に徹して、物を観よ」。筆者が若いころに、諸先輩からよく言われた言葉である。各社の報道記者たちは表面だけを見て、深意をつかむ能力が低いのではないか。和歌山も長崎もIR誘致開発に適さない候補地であり、採算性はない。ギャンブル依存症の懸念は本質的な問題ではない。
長崎IRはさらなる墓穴を掘ったようだ。というのも、県や議会、福岡財界関係機関の一部とその関係者が、「ハウステンボス」への増幅する危機感を止められないからだ。コロナ禍で、実質上の経営者であるエイチ・アイ・エス(HIS)が瀕死の状態にあり、もし、IR誘致開発が県の段階で崩壊すると、各関係者の責任問題となる。その回避を目的とした“申請のための申請”であり、国に責任転嫁を図るものと言っても過言ではない。
長崎県および議会には、過去3度に渡り“閉鎖危機”に直面したハウステンボスを、佐世保市を守るためにも絶対に潰せないという事情がある。さらに、昨年8月の本件入札問題(オシドリ・インターナショナル・ディベロップメントなど中華系企業による落札をめぐる訴訟問題)の責任回避もある。
九州電力や西部ガスなどは、福岡財界の投資済み問題(HIS継承時の資本参加)、ハウステンボスとその園内にあるエネルギーセンター(現在はHTBエナジーにより地元住民へエネルギー供給)の閉鎖危機問題も抱えている。
JR九州は、当時のJR九州責任者によるハウステンボス駅新設とその引き込み線の廃止危機問題がある。
これらに主眼を置き、当初からハウステンボスの延命を図り、IR誘致開発に積極的な姿勢を示してきた経緯があり、現在に至っている。
HISは、県と約束済みの本件確定時の約200億円に上る隣接地の譲渡売却などが最優先課題であり、IRの採算性を度外視した当時の責任者による責任回避が、この区域認定申請問題に絡んでいる。
長崎県および議会はさらに墓穴を掘る
長崎IR総事業費4,383億円の具体的な投融資先も明確にならないなか、20日の長崎県議会での区域認定申請は本来ならば考えられないことだ。必要な資金を米大手の不動産投資開発企業CBRE社にすがり付き、丸投げしようという判断である。
中国・習近平政権の「カジノ観光禁止制限」の下で、中国富裕層の来場者数を主体にした「年間集客計画670万人」などは、ずさんな数値だ。プロ集団の同社がこのことを見逃すはずがない。長崎IRは、国が判断を下すより早い段階で崩壊する可能性もある。今回、和歌山県および議会は妥当な判断をしたと評価できるが、一方、長崎IRをめぐっては、さらに墓穴を掘ることになりかねない判断が行われた。
【青木 義彦】
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