【脊振の自然に魅せられて】春の花が咲く山道へ(後)
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少し足を伸ばして日陰に咲くニリンソウの撮影に入る。多くの登山者が通ったからなのか、よく見るとニリンソウが咲いている山の斜面は土がむき出しになっていた。「何か咲いているのかな?」と思い、その場所に行くと、ヒトリシズカがオオキツネノカミソリの葉がある場所に咲いていた。オオキツネノカミソリの葉も何カ所も登山靴により踏み荒らされていた。おそらく花の撮影に夢中になり過ぎたのであろう。
記録のために、この光景を撮影し、再び荒らされないように石や枯れ枝で道を塞いだ。ここで、しばらく休んでいると男女5人のグループがヒトリシズカの撮影をしようとしている。筆者は思わず「葉を踏まないでね」と言葉をかけた。すると、そのうちの男性の一人が「池田さんでしょう」と声をかけてきた。よく見ると私の写真集を買ってくれた方だった。彼は「この人は写真がうまい!葉の1枚1枚丁寧に写し、構図もいい」と他のメンバーに紹介してくれた。彼らはこれから井原山へ向かうのだという。
少し歩くとルートが分岐する。陽がよく当たるルートにニリンソウとイチリンソウが仲良く咲いている場所がある。しかし、この場所も登山靴で踏み荒らされていた。数年前までは見られなかった光景である。
ここも流木を拾い集め道を塞ぐ。それでも登山初心者と思われる老夫婦が入ってきて撮影していた。筆者は「花を大事にしてください」と老父婦に声をかけた。花を撮影して自慢したいのか、登った証にしたいだけなのか。登山者が増えると山も荒れるため心が痛む。
帰り道、目の前に生まれたばかりのような小さなクマバチが草のなかでハイハイしているのに気付いた。観察していると、イチリンソウの花の間をかき分け、イチリンソウより小さいヤマエンゴサクの花にとまり静かに体を休ませていた。急いでカメラを構えてシャッターを切る。白い花と蜂の黒い姿を撮影するのには苦労した。露出が合わず、蜂の頭が鮮明に映らないのだ。撮影後、筆者はクマバチに「元気でね」と声をかけて登山口へと戻った。
イチリンソウとニリンソウの違い
[イチリンソウ]
500円玉大の花。花はニリンソウより一回り大きく葉に切れ込みがある。
イチリンソウは太陽の光を浴びて花を開き、雨の日は静かに花を閉じている。[ニリンソウ]
群生して咲く。葉は子どもの手を広げたようなかたちで、片方の花が早く咲き、遅れて二輪目が咲いて一対の花となる。ともに純白の花である。(了)
2022年4月25日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行関連キーワード
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