世界を飲み込む環境汚染という大津波
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、5月6日付の記事を紹介する。世界の1万人以上の気候専門家と科学研究機関の97%が人類による地球環境の破壊に警鐘を鳴らしています。曰く「このままでは、2026年には人類は絶滅の危機に瀕する」。その最大の理由は「環境破壊」です。
ところが、日本ではそうした訴えの声がまったく報じられません。ウクライナ戦争に関しては、連日、ニュースや解説が流されていますが、概ね「ロシアが悪で、ウクライナが善」といった見方が主流で、「戦争は長期化するだろうが、日本には直接の影響は少ないだろう」という楽観的なものです。
もちろん、核兵器の使用という危険性も排除されていませんが、大方の受け止め方は「最悪の事態は避けられるだろう」とった根拠なき希望的観測に過ぎません。今必要なことは、ウクライナ戦争の陰で確実に進行している環境汚染という「大津波」への備えではないかと思います。
いうまでもなく、核兵器の使用は環境汚染を極限まで悪化させるでしょう。しかし、それ以前に我々自身が「見て見ぬふりを決め込んできたために」加速する一方の地球温暖化に正面から向き合うことが必要です。産業革命以前と比べ地球上の気温は10度近くも上昇しています。我が国でも「四季」の移り変わりが感じられにくくなり、極端に寒い冬と極端に暑い夏という「二季」になってしまったと感じる人が多いはずです。
また、日本では話題となっていませんが、北極海海底での異変も深刻化を増す一方となっています。なぜなら、海底からメタンガスの噴出が続いているのですが、その分量が多いため海中で溶けず、大気中へ放出されているからです。その結果、北米やロシアの森林地帯や泥炭地での火災が大規模に発生しています。
それ以外にも、身近な人間の経済活動や世界各地で相次ぐ軍事行動がもたらす二酸化炭素とメタンガスの排出も問題を複雑化させるばかりです。先進国では森林を切り崩し、スマートシティという名のコンクリートで固めた建造物をつくり、途上国では排気ガスをまき散らす自動車や飛行機が大手を振っています。
さらには、クリーンエネルギー源といわれるものの、ひとたび事故が起これば、原子力発電も放射能汚染の発生源となります。福島原発事故によって発生した汚染水用のタンクはほぼ満杯状態になりつつあり、結局、希釈しての海洋放出ということになるようで、周辺国からは懸念や危惧の声が大きくなる一方です。
現状でもプラスティック汚染が拡大しており、いくら安全基準を満たしていると言っても、放射能汚染水の処理に関しては、より科学的で周辺国も含め納得が得られるような安全対策が求められているのではないでしょうか。このままでは海洋資源への悪影響はぬぐえません。それでなくとも、実は、すでに世界各地で食糧生産に陰りが見られています。
戦時下のロシア、ウクライナに加え、アメリカ、インド、中国でも異常気象による収穫量が激減しているからです。アメリカの農業州でも世界第2の小麦輸出国のインドでも熱波の影響で穀物生産が大きな被害を受けています。
加えて、世界的な肥料不足によって、農業従事者は植え付けが思うに任せないという事態に陥ってしまいました。これでは世界的な食糧危機は避けられそうにありません。
とはいえ、そうした事態を予測していたかのように、ビル・ゲイツ氏や大手食糧生産企業は種子と農地の独占に動いているようです。ゲイツ氏はノルウェーのスピッツベルゲン島に「終末に備える種子バンク」を建設し、世界中から種子を集めています。
しかも、同氏はアメリカ政府から資金を調達し、コロナウイルス対策用のワクチン成分である「mRNA」を埋め込んだ野菜や果物の実験栽培も始めたようです。いわば「食べるワクチン」という新商品で、ワクチン接種に懐疑的な層を取り込もうとする戦略に他なりません。これまでも、ゲイツ氏は大豆など食物繊維を活用した人工肉の製造販売に力を入れており、すでに「インポッシブルミート」として定着しています。
ところで、現時点ではあまり話題にはなっていませんが、専門家の間では昆虫類が絶滅の危機に瀕していることが指摘されるようになりました。驚くべきことですが、昆虫類の75%から90%もがすでに姿を消しているとのこと。こうした生き物の生息場所でもある熱帯雨林が毎日8万エーカーも消滅中となっているからです。
毎日200種類の植物、鳥、動物、魚、両生類、昆虫、爬虫類が地球から姿を消しています。ほとんど知られていませんが、2万6000種類はすでに絶滅の危機に瀕しており、絶滅予備軍と言っても過言ではありません。要は、生物圏(水、地表、大気)の崩壊が間近に迫っているのです。
こうした大津波を前にして、人類だけが生き残れることはあり得ないと思われます。2026年まで、あと4年。世界を飲み込む大津波を防ぐ防波堤を築くことができるか、どうか。人類の英知が求められます。
次号「第294回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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