テラ暴落で仮想通貨市場に激震(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏なぜテラは暴落したのか
大暴落した「テラUST」は、アップルのエンジニア出身、1991年生まれのクォン・ドヒョンCEOが率いるテラフォームラボが発行したステーブルコインだ。
「テザー(USDT)」と同じく、テラも価格が常に1ドルに固定されるようになっている。価格を固定することをペギング(Pegging)という。テザーのようにドルや国債のような安全資産を担保にするのがペギングの方法としては一般的だ。仮に価格が下がっても、もっている担保で支払いができるという信頼を与えられるからだ。
しかし、テラの場合、このような安全資産がなく、姉妹コインである「Terra(LUNA)」で価格を調節していた。テラは、常に1ドル分のルナと交換されるのを前提に成立していた。たとえば、テラの価格が下がって0.8ドルになったら、1ドル分のルナと交換される。投資家は0.8ドルのテラ1個で1ドル相当のルナをもらうので、0.2ドル得をする。テラがルナと交換されたため、市中にあるテラの数量が減り、その結果、テラの価格が上昇しやすくなる。反対にテラの価格が1ドル以上になった場合、1ドルのルナを1.2ドルのテラと交換する。そうすると、テラの供給量が増え、テラの価格が1ドルに戻る。こうした仕組みにより、テラは価格を維持してきた。しかし、業界では「裏付けとなる資産なしに、アルゴリズムだけで価格を維持する仕組みは詐欺ではないか」という批判も上がっていた。
非常に合理的であるかのように見えたこの仕組みに、綻びが生じた。仮想通貨市場から資金流出が起こり、仮想通貨市場が縮小し始めると、仮想通貨に対する信頼がなくなった。その結果、テラの価格崩壊へとつながったのである。投資家はパニックとなり、売りが集中、テラとルナは同時に暴落してしまった。
テラが急落したのは、ビットコインなどの仮想通貨が急落したことで、テラもそのあおりを受け、アルゴリズムが機能しなくなったためだ。もう1つの要因として、テラは預ければ20%という高い利回りがつくことで人気を博し、資金を集めていたが、その分散型金融プロジェクト「DeFi」が取り付け騒ぎに近い資金流出に見舞われたことが挙げられる。
「テラは裏付け資産がなくて危うい」という指摘を受け、テラフォームラボは35億ドル規模のビットコインを購入し、裏付け資産とした。しかし、ビットコインを売却してテラの価格を安定させるのが間に合わないほど、売りの勢いが急激だった。
また、分散型金融の高い利子を支払うためにテラフォームラボは相当無理をしたのではないかと推測する向きもある。しかし、そうした懸念があったとしても、これほど急激にコインが大暴落するのは珍しい。業界では外部の特定勢力による攻撃があったに違いないと推測している。攻撃によって信頼が崩れたシステムが連鎖反応的に売りを呼び、大暴落を引き起こしてしまったのだ。
今後の展望は
今回の騒動によって、ステーブルコインに対する規制論が世界中で巻き起こりそうだ。コインマーケットキャップによれば、テラの時価総額は約1兆4,000億円で、ステーブルコイン市場では4位にすぎない。しかし、市場への影響は計り知れないと考えられている。
テラの暴落が、仮想通貨市場崩壊の引き金になるのではないかと業界は固唾を飲んで動向を見守っている。テザーからも資金流出があったり、仮想通貨市場全体に動揺が広がったりしている。テラの大暴落が市場にどのような影響をもたらすのか、もう少し様子を見ていく必要があるだろう。
(了)
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