世界初のRNA編集技術、医療のリスクを軽減し世の中に貢献(前)
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エディットフォース(株)
代表取締役社長 小野 高 氏2015年5月、老舗化学系商社のKISCO(株)(大阪市中央区、岸本剛一代表)と九州大学教授・中村崇裕氏らによって設立された九州大学発ベンチャー・エディットフォース(株)。同社は世界初となる「RNAのゲノム編集技術」を確立した。医療・農業・生物などさまざまな分野で応用が可能なこの技術を駆使し、現在は創薬に注力している。
世界初の技術を確立
──貴社設立の経緯についてお聞かせください。
小野高氏(以下、小野) 我々は九州大学発のベンチャー企業で、会社設立以前から「PPRタンパク質(※1)」を使用した独自のRNA/DNA編集技術を研究しています。PPRタンパク質とは、植物から発見された「RNA(※2)塩基配列特異的に結合するタンパク質遺伝子」のことです。このタンパク質が発見されたことにより、今まで、DNAでしか行えなかったゲノム編集がRNAでも行えるようになります。その研究にいち早く興味をもち、声をかけてくださったのが、KISCOさんでした。九州大学の教授である中村崇裕氏と、当社CTO八木祐介、KISCOさんが共同で設立したのがエディットフォースになります。一般的に、大学発ベンチャーはVC(ベンチャーキャピタル)が目を付けてそこから資金調達を行うことが多いと思いますが、当社は実態のある企業と組んで事業を始めたということで、なかなか珍しい例であると思います。
──どのようにしてRNA編集技術を確立したのですか。
小野 まず当社の研究は、植物内に約500種類ものPPRたんぱく質が存在しているという発見から始まりました。そこで研究しているうちに、このたんぱく質がどうもRNAに作用しているようだ、ということが判明しました。発見した当時、RNAに結合できるタンパク質は世に出ておらず、そこで九州大学で特許を取得しました。今同じようにPPRについて研究しているグループが、フランスとオーストラリアなどにあります。
──ゲノム編集に危険なイメージをもたれる方もいるかと思います。
小野 SF映画と、あとは食品ですね。遺伝子組み換え食品によるアレルギー事故が日本やヨーロッパで起こったので、そのイメージを引きずっている方もおられると思います。もちろんリスクがまったくないとは言い切れないのですが、その多少のリスクが誇張されて伝わっていることは多いです。 現在はゲノム編集の精度が格段に上がっており、編集したい箇所をほぼピンポイントで狙えるようになっています。とくに医薬分野においては、目の前で亡くなる患者さんを救う喫緊の課題があり、これからの医療でゲノム編集技術は必須の技術になると考えられます。日本には食品があふれているので、食べられないものがあればほかの食品で代用可能ですが、病気の治療はほかに替えが利きません。前述した通り、我々は現在医療分野に注力していますので、まずは医療でしっかり地盤を整えたうえで、食品やエネルギーなどの分野にも領域を拡大していきたいと考えています。
──会社設立に至り、どのような変化がありましたか。
小野 やはり大学での研究と企業での研究では、事業の行いやすさが違います。企業となれば知名度も上がりますし、またほかの企業さんと共同で事業を行う際にも、会社として話をする方がスムーズに進みやすいというのが利点としてあります。
──PPR技術はどのような分野で応用が可能なのでしょうか。
小野 PPR技術の可能性というのは無限に存在するものと考えています。たとえば創薬、遺伝子組み換え技術、微生物の改変などですね。ですから当社も、設立当初は「何にでも可能性が期待できるコンテンツ」ということを売りにしてきました。しかし、漠然と「何でもできる」と掲げることは、実際には「何もできない」ことと紙一重だと考えているのです。我々は30人ほどで動いていますし、それぞれ専門性もありますので、多くの分野に手を出すとすべて中途半端になってしまいかねません。そこでまずどれか1つにフォーカスしようと考え、まずは医療の分野に集中し、業務提携などを進めています。現在は2社の製薬会社と契約・共同研究をさせていただいています。
※1:植物で発見されたRNA塩基配列特異的に結合する核酸結合タンパク質。 ^
※2:リボ核酸。一般にDNA(デオキシリボ核酸)を鋳型として合成され、その遺伝情報の伝達やタンパク質の合成に関与する。 ^(つづく)
【立野 夏海】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:小野 高
本社所在地:福岡市中央区天神1-9-17
福岡研究所:福岡市西区元岡744
九州大学ウエスト5号館430
設 立:2015年5月
資本金:9,000万円
URL:https://www.editforce.co.jp/
<プロフィール>
小野 高(おの・たかし)
2002年(株)そーせい入社。事業開発部マネージャーを経て事業開発部長を歴任。09年伊藤忠商事(株)入社。開発・調査部、エネルギー化学品カンパニー化学品部門などでプロジェクトマネージャーを務める傍ら、ソレイジア・ファーマ(株)のVP事業開発部長を務めた。18年からエディットフォース(株)に取締役COOとして参画。19年代表取締役社長に就任。東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。法人名
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