2024年12月24日( 火 )

山口FGの再建を“真剣”に考える(3)

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新「両翼作戦」を策定

銀行 イメージ    山口FGが、山口銀行時代から進めてきた施策に「両翼作戦」というものがある。山口銀行が近隣の福岡県、広島県に進出するというものである。この作戦は成功し、都市部の北九州市、広島市で一定の取引拡大に成功した。その後、広島県の第二地銀・もみじ銀行と統合することとなり、広島県での存在感がさらに増した。また、福岡県においても山口銀行から分離し、北九州銀行を設立するまでになったのである。

 しかし、3銀行体制となった後は、成功といえるほどの施策はなく、むしろ3銀行の併存のためにエネルギーが使われているように見える。たとえば、山口銀行は広島県内でも店舗展開をしており、広島県内における法人融資のシェアも低くはない。しかし、山口銀行、もみじ銀行を合算しても広島銀行にはおよばない。また、店舗も人員も重複してコストが嵩む。統合効果を生かし、広島県内でのシェアを拡大するためにも、役割を明確にするべきだろう。そのために広島県内にある山口銀行の店舗をもみじ銀行に移すことも一考に値するのではないか。もし、プライドの高い山口銀行が認めないというのであれば、法人融資を山口銀行に集約するというオプションがある。銀行代理業を活用するなどして、効果を出す方法はあるはずである。大事なことは思考を停止せず、広島銀行に追い付き、追い越すための施策を立案し、実行することだ。

 北九州銀行は、北九州市においても福岡銀行、西日本シティ銀行の後塵を拝し、福岡市に至っては他行から相手にされていないのが現実だ。そのような立場でありながら、行員のチャレンジャー精神は乏しいように思われる。北九州銀行に必要なのは、山口FGという大企業の意識を捨てて、信金・信組のような地域密着の姿勢で顧客と接することである。もしくは、ベンチャー企業のようなハングリー精神で営業活動に取り組むことではないだろうか。

 福岡県民は地元愛が強い。北九州市民には、福岡銀行も西日本シティ銀行も福岡市の銀行、北九州銀行も山口県の銀行という思いが少なからずある。他行との違いを打ち出し、「北九州銀行は北九州市の銀行だ」と認識されたときに潮目が変わる。

 かつての「両翼作戦」は山口銀行単独で行っていたものであり、統一的な施策で行っても問題なかったのだろう。しかし、新「両翼作戦」は、3銀行で取り組む必要がある。また、かつての<隣県への進出>から、<地域への定着>と<さらなる発展>という次の段階に進むためには、地域の実情に合わせた対応も必要だ。もみじ銀行、北九州銀行の意向を反映させた柔軟な意思決定を行える体制が望ましいだろう。さらには、もはや銀行業だけで考える必要はなく、他の事業やグループ会社も活用した施策を行うことも必要だ。

 たとえば、「保険ひろば」である。「保険ひろば」は、県という営業範囲にとらわれず、中国地方・九州地方の広範囲で営業活動を行っている。数年前に福岡市に進出して失敗しているが、銀行サービスも扱う<総合金融ショップ>として再び福岡市に進出することも考えられる。総合金融ショップという業態はまだ定着しておらず、広島市での展開や、さらに広範囲での展開も期待できるかもしれない。

 福岡銀行が法人への保険販売を行っているが、苦戦しているようである。これは融資先への保険販売ができないという法規制があるためだ。したがって福岡市における融資シェアが低い北九州銀行が、福岡市で法人への保険販売に取り組むことも考えられる。山口県内においても、資金余剰で融資を必要としない事業者が増えている。そのような事業者に保険の提案をする余地はあるはずで、山口FGとして本格的に取り組むべきだろう。

 福岡市では、地元行のみならず、九州FGやメガバンクも積極的な営業活動を展開している。一方、山口FGが十分な施策を行っているようには感じられない。「ららぽーと福岡」に子どもの職業・社会体験施設「キッザニア福岡」が7月に開業するが、銀行体験コーナーには、ふくおかFGとauじぶん銀行が出展すると公表されている。

 地銀だけでなく、インターネット銀行も虎視眈々と狙う福岡市のマーケットは競争が激化している。山口FGの成長のためには、施策の実行あるのみだ。

(つづく)

【特別取材班】

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