山口FGの再建を“真剣”に考える(4)
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カード会社を統合し、新たなサービスの提供を
山口フィナンシャルグループ(FG)はカード会社を抱えすぎており、整理が必要だ。やまぎんカード、もみじカードだけでなく、井筒屋ウィズカード(100%出資)とワイエムセゾン(50%出資)という会社もある。少なくとも、やまぎんカードともみじカードは合併する。提携するメガバンク系カード会社とのしがらみもあるが、明らかに非効率だ。VISA、MASTERの両ブランドが使えるのであれば、顧客への影響は少ない。
先送りせず、どのように提携を継続するかの決断が急務である。また、提携先を絞り込めない場合でも、企業としての体力向上のために合併は行う。これで管理コストを削減できるはずだ。
クレジットカードは、金融サービスにとって重要なパーツとなっている。SBI証券や楽天証券はクレジットカードでの投資信託の積立で残高を増やしており、証券事業にも必要なパーツとなった。百貨店系列のエポスカードは、積立投資のために証券会社を設立している。新統合カード会社や井筒屋ウィズカードがSBI証券と提携し、証券事業を行うといったことも考えられる。
また、さまざまなサービスとの連携で会員数を伸ばしているカード会社も多い。楽天の各種サービスと連携している楽天カードはその典型だ。ドコモも通信料金支払いとの連携により、カード会員数を大きく伸ばしている。バーコード決済と連携したPayPayカードもある。地銀グループとして、どのようなサービスとの連携が利用者のためになるかを考えていくことも重要だ。
法人取引でも、クレジットカードの役割は大きくなっている。世の中でキャッシュレスが進み、従業員の立替もカード決済が浸透していることも理由だろう。大手カード会社が格安の年会費で発行したり、会計サービスを提供するフィンテック企業が参入したりする動きがある。それらの企業では行うことができず、地域に多くの取引先を持つ地銀だからこそ取り組めることもあるはずだ。すでに多くの法人顧客を持つ地銀であれば、先んじて法人カードの利用を促していくことも有効な方法である。
保険ひろばを積極的に活用し、新たな役割を
昨年度、山口FGでは保険ひろばの保有株式を減損することになり、山口FG内部で保険ひろばの事業性が問題視されている。これは、高値で買った山口FGに価値を見定める力がなかっただけであり、保険ひろば側には関係のない話だろう。むしろ、2016年9月に買収して以降、これといった活用策を打ち出せなかった山口FGの責任が問われる話だ。
最近、象徴的な出来事があった。山口FG本部・山口銀行本店のすぐ近くに「シーモール」という商業施設がある。ここには保険ひろばが店舗を出店していたのだが、ひっそりと閉店した。シーモールの店舗はもともと「保険ひろば シーモール店」として運営していたのだが、17年6月に「保険ひろば+ シーモール店」(ワイエムライフプランニングが運営)となったものの、2年も経たずに閉店し、19年3月には再び「保険ひろば シーモール店」となった。
どうやら、店舗が変わる度に顧客がたらい回しにされ、嫌気がさした顧客が離れていったことが閉店に至った原因だという。とくに、「保険ひろば+」で契約した顧客は、“担当者が変わることもなく、ずっとお付き合いする”と言われたにもかかわらず、担当者は異動で交代となり、さらには店舗も閉鎖でなくなると告げられたという。そのような話は口コミでも広がる。山口FGの戦略のなさで、保険ひろばの店舗を潰したようなものである。しかも、山口銀行本店の目と鼻の先での出来事だ。十分な連携も行っていなかったと推察される。
「保険ひろば+」閉店時のワイエムライフプランニングの社長K(現在は北九州銀行折尾支店長)は、閉店店舗の従業員に対して何ら説明も行わず、閉店にともなって保険ひろばに出向する社員に対しても冷淡な態度だったそうだ。
これまで、保険ひろばに関しては連携策が検討されていたにもかかわらず、ほとんどが実行されずに終わっている。保険ひろばはショッピングモールのような商業施設内の店舗を中心に展開しており、銀行とは立地も客層も大きく異なっている。この違いに着目し、銀行のミニ店舗のような機能をもたせていくという構想があった。現在の保険ショップに加え、銀行の預金や住宅ローン、証券投資を案内するというものだ。
結局、現在の保険ひろばは住宅ローンの取り次ぎを行っているのみで、十分な成果が出ていない。広範囲で展開する保険ショップが総合金融ショップに転換した例はなく、山口FGは今からでも取り組み、全国でも先進的な事例をつくってみてはどうだろうか。これは、全国で唯一、多店舗の保険ショップを有する山口FGのみにできることである。
さらには、銀行の保険販売の一部を保険ひろばが担うことも考えてよい。銀行で主に販売する保険は、一時払いの運用型であろう。医療保険やがん保険のような掛け捨て型は、保険ショップが得意とする分野である。銀行と保険ショップのそれぞれの得意分野を生かすというすみ分けも、保険ショップを有する山口FGだからこそできるものであり、他行が真似をできるものではない。
(つづく)
【特別取材班】
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