2024年12月23日( 月 )

【BIS論壇No.383】世界銀行の2022年世界経済見通し

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は6月9日の記事を紹介する。

世界 経済 状況 イメージ    世界銀行は6月7日公表の世界経済見通しで2022年の世界経済成長率は2.9%になるとして、1月時点の予測から1.2%見通しを引き下げた。これは21年の5.7%から3%近い大幅な減速となる。世界的な景気の後退とウクライナ危機に影響されたインフレが同時進行するスタグフレーションが世界で進行すると世銀は見ている。

 ウクライナ戦争は世界経済にインフレの高進と金融環境のタイト化を招来。とくに戦争の影響が大きいユーロ圏は2022年2.5%、米国2.5%、これに比し日本は22年1.7%、23年1.3%、24年0.6%と最低の成長率である。これに対し岸田政権では危機感がなく、抜本的対策が打ち出されておらず、逆に防衛費の増大が検討されているのは本末転倒だ。

 コロナ政策で上海を中心に外出禁止を打ち出し、経済成長が減速した中国は22年4.3%、 日米欧の経済制裁の打撃を受けているロシアは8.9%のマイナスと世銀は予測している。

 コロナ禍から十分回復していない現状下、ウクライナ危機でエネルギーや食料価格が急騰。日本においてもガソリンなどに加え、食料、食品など軒並み値上げが行われる状態で、日本の22年のGDP成長予想は上記通り、22年1.7%、23年1.3%、24年0.6%と各国で最低の成長である。にもかかわらず岸田政権が打ち出した経済政策「新しい資本主義」には積極的な経済政策は見当たらず、このままでは日本経済は輸入物価高騰、成長戦略の欠如で23年にはGDP成長率は1%を切るのではと悲観的な見方も出てきている。

 内閣府が8日発表した2022年1~3月期の速報値では実質GDPは前期比0.1%減。年率換算で0.5%減だ。設備投資が0.7%減で、ソフトウエア投資などの減少幅が拡大。公共投資も3.9%減と拡大している。資源高の影響で店頭陳列品はほぼすべて値上げだ。供給も圧倒的に不足状態が継続しており、日本経済の先行きを不安視する見方も出ている。

 世銀予測では中国は22年4.3%のGDP成長から、23年は5.2%へ増加。インドネシア22年5.1%、23年5.3%。フィリピン22年5.7%、23年5.6%、タイ22年5.1%、23年5.3%に比し、ベトナムは22年5.8%、23年6.5%、インドは22年7.5%、23年7.1%とベトナム、インドがアジアで高い成長率を示し、アフリカではナイジェリアが22年3.4%、23年3.2%の成長と予想されている。

 話題の『情報の選球眼 真実の収集・分析・発信』(幻冬舎新書)の著者、山本康正氏は「情報から未来を予測する」重要性を強調しておられるが、上記世銀の22年の世界経済予測から将来の世界経済を予測し、日本の国家戦略を確立することこそ急務だ。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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