韓国経済ウォッチ~原発は大丈夫か?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
人類は、核分裂によるエネルギーを、まず兵器に利用できないかと思い始めた。核分裂する元素には、周知の通りウランとプルトニウムがある。アメリカは第二次世界大戦の末期に、この2種類の元素を利用した核爆弾を開発した。開発された爆弾は、ウラン型は広島に、プルトニウム型は長崎に投下され、不幸なことに日本は世界初の原爆の被爆地になる。核エネルギーは、戦後ももっぱら兵器として研究開発されてきた。
しかし、この強力なエネルギーを一瞬に爆発させるのではなく、制御しながら小出しに利用する方法はないかという研究も行われた。最初は、この方式を原子力潜水艦の動力として利用することを模索し、それを推し進めるなかで、ウェスティングハウスのPWR(加圧水炉)と GEのBWR(沸騰水炉)という原子炉が開発された。兵器開発でスタートした原子力が、原子力発電として利用されるようになったきっかけは、それから少し時間を経過してからである。
1953年、アメリカのアイゼンハワー大統領は、国連本部で有名な演説を行った。「Atomic for Peace(原子力を平和のために)」という内容の演説である。この演説は、振り返ってみると、原子力の平和利用の道を開いたきっかけをつくった。もちろんこの演説は、当時建設中であった原子力発電所を認めさせることを念頭に置いた演説でもあった。アメリカで最初に稼動した原子力発電所は、フィラデルフィア州シッピングポートに建設された原発で、57年4月のことである。その後、アメリカ政府の強力な売り込みの結果、日本、ドイツ、スウェーデンなどにも原子力発電所が建設されることになる。
原子力発電とは
原子力発電所では、原子炉のなかでウランを核分裂させ、その際に発生する熱を利用してお湯を沸騰させる。沸騰したお湯で発生する水蒸気でタービンを回して電気を得るのが原子力発電である。他の発電と方法は同じだが、お湯を沸かす材料において、今までの石炭、石油、ガスの代わりに核燃料が使われているだけである。しかし、発電する方法は同一でも、原子力発電の性格上、きちんと守らないないといけない点がいくつかある。緊急事態が起こったときに、自動的に制御棒が原子炉の炉心に差し込まれて核分裂の連鎖反応が「止まる」こと、燃料棒は運転を停止しても熱がずっと残るためその燃料棒を「冷やす」こと、それから放射性物質が外に漏れないように「封じ込める」こと、などが徹底されないといけない。
それに、使用済み燃料の処理問題である。使用済み燃料は使った後でも4、5年間は冷やす必要があるし、放射能が漏れないように長期にわたって管理しなければならない。
世界的に、使用済み燃料の処理方法はいまだ確立されておらず、その場所の選定などをめぐって、地元住民の抵抗が大きいことも現実である。原発の安全性に対して、一部では疑念が持たれていたなかで、79年3月28日、アメリカペンシルベニア州スリーマイル島の原発で、原子炉が空焚きする事故が発生。放射能が大量に空気中に放出された。
また、86年4月26日、旧ソ連のチェルノブイリで、原子炉建屋の天井が抜ける蒸気爆発が発生し、大量の放射能を放出するような事故が起こった。
さらに、2011年3月11日、福島第一原発に大地震と津波による原子炉のメルトダウンが発生し、大気中に多量の放射性を放出する事故が発生した。このような事故を受け、原発に対する反対運動も激しくなっている。とくに、ドイツを中心にヨーロッパではそのような傾向が強い。しかし、フランスは電力の80%を原発でまかなう世界第2の原発大国であるし、日本も安倍政権になって、原発再稼動などの原発推進に舵を切っている。アメリカも世界一の原発保有国で、104基の原発を保有している。
(つづく)
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