Z世代の就活事情 その多様性と“闇”(前)
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コロナ禍が一定の収束傾向を見せるなかで、企業による採用活動が活発化している。来年(2023年)卒業する大学生の就職内定率が7割を超えたという(6月1日時点リクルート調べ)。4月にデータ・マックスに入社した「Z世代」※の男性社員が、リアルな最新の就活事情をレポートする。
※1990年代中盤から2010年ごろまでに生まれた世代。幼少期からデジタル機器に接した初めての世代とされる。早期退職とSNS就活
新卒で採用された新入社員の3分の1が3年以内に退職するという話をよく耳にする。大学生活を犠牲にしてまで打ち込んだ就活、苦労してたどり着いた内定通知にたった3年で見切りをつけてしまう若者の「言い分」とはどんなものなのだろう。
Aさん(男性)は中規模の商社に事務職で入社したものの、1年ももたずに、たった半年ほどで退職した。話を聞くと、仕事量は膨大なうえに、新入社員ということもあってエクセルを使った単純作業がほとんどだったという。社内の風通しが良ければそれでも続けられた可能性があるが、Aさんはもともと新しい人間関係を築くのが苦手だったため、先輩社員や同期社員と馴染むことができず、最終的には適応障害※を発症した。退職後に症状はなくなったものの、再就職先でも同じ問題を抱えてしまい、もうすぐ退職する予定だという。
Bさん(男性)は公務員だったが、Aさん同様に1年も経たずに退職した。人間関係はそれなりにうまくいっていたが、就業時間が長いうえに夜勤もあり、主に体力的な面で限界を感じたという。体力的にきつくなると仕事にも面白さを見出せなくなり、半年が過ぎたころからはずっと「辞めたい」という思いを抱えて悶々としていたという。彼はInstagramを駆使して転職先を探したうえで退職した。
いま、TwitterやInstagram、TikTokなどのSNSを使って職を探す若者と、逆にそうしたSNSを主なフィールドとして人材を募集する企業や就職エージェントが数多く存在する。動画投稿サイトYouTubeやInstagramのライブ配信機能を使って説明会を開く企業も珍しくなくなった。SNSを利用した就活が台頭したのは、対面接触ができなくなったコロナ禍の影響はあるものの、企業側がSNSで学生に接触することの「うま味」に気づいたことも大きい。つまり、無味乾燥な「労働」をそのまま見せてしまえば競合他社との差別化は難しいが、たとえば社内の「映える」場面を切り取ってアピールし、そのまま若者を囲い込んでしまうという戦略にSNSはうってつけのツールとなるのだ。
SNSの「映え」アピール効果の一例としては、たとえば同世代の若い社員たちが楽しそうに仕事をしている様子にちょっとした編集を加えて発信する、あるいは趣向を凝らしたおしゃれなオフィスの画像をアップする、などがある。さらに採用活動と同時並行で、Twitter、Instagram、TikTokなどで「知識系」の情報発信を行っている企業も見受けられる。内容は自己啓発に始まり、就活マナーや業界の知識など、就活生の耳より情報がメインコンテンツとなる。
こうした傾向は今後も強まるのではないかと思う。若者世代は文字よりも画像や動画などを中心とするSNSに惹かれる傾向があるため、企業側はまず、(1)可能な限りキラキラした画像・動画を発信することで学生を囲い込む、さらに文字情報としては、(2)簡単で即効性のある知識を流すことでSNSの定着率を高めて求職者を集める、ということだ。しかし、こうした手軽な就活が一般化することで、若者がネットの情報をそのまま真に受けてしまう危険性もある。
SNSで就活生を集める就職・転職エージェントなども多数存在している。彼らにとっては求職者こそ「商品」であり、商品を売る以上、そこに何らかのギミック(仕掛け)があっても不思議ではない。就活生はそうした現実を知ったうえで、ネットの情報に接すべきだろう。
※環境の変化に馴染めないことがストレスになって心身に症状が現れ、生活に支障をきたす心因性の精神疾患。(つづく)
【吉村 直紘】関連キーワード
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