2024年11月24日( 日 )

Z世代の就活事情 その多様性と“闇”(中)

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コロナ禍が一定の収束傾向を見せるなかで、企業による採用活動が活発化している。来年(2023年)卒業する大学生の就職内定率が7割を超えたという(6月1日時点リクルート調べ)。4月にデータ・マックスに入社した「Z世代」※の男性社員が、リアルな最新の就活事情をレポートする。
※1990年代中盤から2010年ごろまでに生まれた世代。幼少期からデジタル機器に接した初めての世代とされる。

就活をしなかった学生たち

 学生たちは卒業と同時に即「サラリーマン」(働き手)になるわけではない。就活が法律で義務付けられているわけではなく、そもそも就活をしなかった、あるいは就活を途中で辞めたという学生も少なくない。たとえば、昔から存在している音楽や演劇、漫画家などのクリエイティブな道を目指す者のほか、就職に対して極端に悪いイメージをもっているためにフリーランスでの働き方や起業を目指すなど、自力で稼いでいこうとする者もいる。

 しかし、現実はなかなか厳しく、すぐにうまくいくケースはほとんどないように思う。知人の例でいうと、就活を選ばなかった者の多くがしばらくすると「既卒」という形態で就活を開始したり、あるいは本意ではないアルバイト漬けになったりしている。変わった例でいうと、恋人に扶養されることを選ぶ、いわゆる「ヒモ」になるケースもある。

 あくまで見聞きした範囲での話だが、基本的には本人の望まなかった状態に陥り、その状況から抜け出そうともがいていることが多い。ユーチューバーやブロガーを目指す者も一定数いるが、ごく一部の成功例を除けば、生活の糧を得る道として選ぶには競争の厳しすぎる世界だ。

SNSは不満のはけ口

 強い自尊心やプライドをもった学生は、就活面接を突破できないままに卒業することも多く、そうした者は学生の言葉で「NNT(ない内定)」と呼ばれている。試しにTwitterで「NNT」で検索してみると、「@NNT〇〇卒」などのアカウントが多数存在しており、彼らが数多くの恨み節を投稿しているのを確認できる。

 また、「早期退職」「辞めたい」「就活しなかった」などのワードで検索すると、就活で思うような結果が得られなかった若者の悲痛な叫びを目にすることができるだろう。「お祈り」※されたことに対する怒りをぶちまける者もいる。「就活の闇」といえば大げさだが、気軽に発信できるSNSをフラストレーションのはけ口にしている学生は多い。

 YouTubeでも、就活への不満をテーマにした動画を多数見つけることができる。学生がただ愚痴を話すだけのもの、実写の映像をバックに恨みつらみを書いたテロップが映るものなど表現方法はいろいろあるが、なかには堂々と顔を晒したうえで配信するつわものもいる。そうしたチャンネルで登録者数や再生回数が伸びているものもあり、同じようなフラストレーションを抱いている若年層の多さがうかがえる。

理想と現実の間で~地方出身者が感じた格差

   この春、福岡から上京したCさん(男性)は、顧客先に常駐するSES(システムエンジニアリングサービス)で働き始めた。いわばアウトソーシングのかたちでソフトウエアやシステムの開発・運用を請け負うサービスで、求人数も多く、文系や未経験者でもシステムエンジニアの経験が積めるということもあって一定の人気がある。

 しかし、この業界は多重下請構造が問題視されており、システムエンジニアという職種から想像される「頭脳労働」ではなく、末端の作業員として酷使されるケースが多く、高度なスキルが身につきにくいとされる。給与が低く昇給もしにくいという実態も徐々に明らかになってきている。さらに、顧客先に常駐するという特殊な形態はコミュニケーション能力の高さも要求されるため、過度なストレスに悩まされる者も多い。

 Cさんは、仕事内容以外にも悩みを抱えている。通勤の都合上、都心に住まざるを得ず、部屋代などの生活費が大きな負担になっているのだ。福岡から東京に転居する際には交通費なども含めて総額70万円ほどかかり、内定が出た後にはそうした費用を稼ぐためにアルバイト漬けの毎日を送った。

 中央と地方の格差もある。東京近郊に住む新入社員の多くは、入社前研修として都内でプログラミングの基礎を学ぶことができたが、東京以外の新入社員はその研修を受けることができなかった。そのため、入社当初は大きな不安を抱えていたという。

 Dさん(女性)は、都内のITベンチャー企業でシステムエンジニアとして働くことを決めた。内定者を対象にした短期インターンの段階で「激務だ」とは思ったものの、なんとなく将来性を感じて、会社側から課せられていたCCNA(基礎的なエンジニアの資格)を取得したうえで無事、入社にこぎ着けている。

 最近では、若い世代をターゲットにした「プログラミングスクール」も多く存在する。「リスキリング(再教育)してデジタル人材に」「エンジニアになって年収アップ」などと耳障りのよいうたい文句は魅力的だが、前述のような「IT作業員」を養成するだけという指摘もある。とくに第二新卒や既卒生は焦りもあって安易に資格取得に動くこともあるが、自分が本当にやりたいことは何なのか、慎重に判断すべきだろう。

※エントリーシートや面接で落選した際のメールに、「ご健勝をお祈り申し上げます」と書かれることから、不採用になることを「お祈りされた」と表現する。

(つづく)
【吉村 直紘】

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