【七呂建設】驚きの「核シェルター」需要 隈研吾カフェは未来への投資
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(株)七呂建設
鹿児島のハウスビルダーとして業績を伸ばす七呂建設。今年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻で、思わぬ余波を受けている。さらに同社は5月、未来への投資ともいうべきコンセプトが満載された「コミュニティカフェ」の起工式を終えたばかり。新しい風がまた、南から吹いてくるようだ。
「核シェルター」の問い合わせが殺到
(株)七呂建設は6月16日、国内では非常に珍しく、九州ではおそらく初めてとなる「家庭用地下核シェルター」のショールームをリニューアルオープンさせた。これは、今年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響を受けたもの。6月に入ってもウクライナ侵攻は終結の見通しが立たず、一時はロシアのプーチン大統領が核兵器の使用に言及したことで全世界的に核戦争や「第三次世界大戦」への危機感が高まり、国際関係は極度に緊張した状態が続いている。
七呂建設では2017年から、米テキサス州サルファースプリングスに拠点を置く「Atlas Survival Shelters社」(アトラス社)が製造する核シェルターを販売してきた。アトラス社は1950年代に設立されて以降、アメリカ軍のアドバイスを受けて開発した地下埋設型シェルターを製造してきた企業。アメリカでは竜巻などの大規模自然災害も多いことからシェルター需要が高く、かつてのキューバ危機(62年)の経験などから核シェルターに対する認識もとくに現実離れしたものと考えない傾向があるという。アトラス社は家庭用から軍隊仕様のものまで幅広く商品を開発し、世界30カ国以上に出荷している。
リニューアルしたショールームは、早く平和な社会を取り戻したいという意味も込めて「PEACE ROOM+α」(ピースルームプラスアルファ)と名付けた。2月のウクライナ侵攻以来、核シェルターへの問い合わせは激増しており、1月比で約23倍(3月は34件、4月は45件)にまで伸びた。さらに6月には同社の核シェルターがNHKの全国放送で紹介されたこともあって、それ以降はさらに全国から問い合わせが殺到する事態になっているという。
同社が扱う核シェルターはアトラス社が開発した地下埋設型タイプで、米軍が設定した基準に準拠した優れた機能を搭載し、安全で快適な生活を送る機能を備えたもの。さらに日本人仕様として壁には桧の壁材、床には無垢材を採用し、木造住宅のような快適性も取り入れた。ソファベッドのカバーも明るい色を採用して、有事の際でも可能な限り快適に過ごせるような細かな心配りも取り入れている。こうしたこだわりの一つひとつは、七呂建設がこだわり抜いてきた顧客目線の具現化でもある。17年に核シェルターの販売を始めて以降、これまで「数件」が成約に至っているが、商品の性質上、契約者の住所や名前、さらに何件が成約に至ったのかは同社のトップシークレットの1つだという。
積極展開で過去最高売上
七呂建設は、鹿児島の地場ハウスメーカーとして、近年、業績の伸長が著しい注目企業の1つだ。積極的な事業展開で業容を拡大し、近年は完成棟数・売上高・利益などで過去最高を更新し続けている。県の人口が減り続けるなかでの業績拡大を成し遂げている背景には、徹底した顧客目線とクオリティーへの飽くなきこだわりがある。
すべての家事がキッチンから徒歩10歩以内で完結するように効率的な導線を実現した「家事時間1/2設計」や、売電収入で家計負担を減らす「ローン0円住宅」など、優れたアイデアが評判を呼び、着工棟数は直近10年間で8.6倍(326棟/21年度)まで急伸させた。完成棟数ランキングでは3年連続で県内トップを達成、「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2021」で4 年連続優秀賞を受賞したほか、2年連続で省エネ住宅優良企業賞も受賞した。
県外では熊本市と都城市に営業拠点を置くほか、昨年は福岡市に完全オンラインショールームを開設した。福岡市への進出はI・Uターン希望者の家づくり相談に乗る体制を整えるとともに、4年後をメドとする本格進出の足がかりとする意図もある。
将来への投資~ビジョンを伝えることも企業の使命
同社のこだわりともいえるのが、決して自社の営利追求のみにとらわれないという社風だ。独善性を排した企業姿勢は自ずと自社を育ててくれた地域への思いにもつながり、さまざまな企画を通して「恩返し」というかたちで地域振興に貢献してきた。
たとえば、建築はデザイン性をともないながらゼロから有をつくり出す、「アート」寄りの業態も備えた分野だといえる。利益を求めつつも創造性や遊び心を盛り込む難しさにやりがいを感じる業界人も少なくない。同社の七呂代表もその1人だ。横浜国立大学で建築を学び、自らも一級建築士の資格をもつからこそ、ホームビルダーという枠を超えた理念をどこまで実現できるかは常に頭にある。
その「遊び心」をかたちに残す取り組みが、5月24日、ついに動き出した。名付けて「鹿児島コミュニティBOOKカフェ」。世界的な実績を持つ建築家・隈研吾氏の設計によるもので、同社の60周年記念事業として鹿児島大学郡元キャンパスそばに若者たちが集う拠点をつくり出す計画だ。世界的建築家の作品に直接触れて若者たちに「刺激を受けてほしいという願いを込め、これから地域を支える世代へ向けた「未来への投資」ともいえるもの。
1~2階は内装に木材をふんだんに使用したカフェ、3階が商談スペース、屋上は桜島を望む開放的ルーフガーデンとする計画だ。カフェは大学生を中心に若い世代が集うコミュニケーションの場として機能することもコンセプトとしており、セミナーや交流会などで使用されることを目指している。七呂代表はとくに建築を学ぶ学生が利用することを念頭に、「鹿児島の若い世代が隈研吾氏の作品に直接触れることで刺激を受け、世界に羽ばたく建築家が誕生してほしい」などと話している。
【データ・マックス編集部】
<施設名>
鹿児島コミュニティBOOKカフェ
<建設地>
鹿児島市荒田(鹿児島大学前)
<設計>
隈研吾建築都市設計事務所
(東京都港区南青山2-24-15)
<施工>
(株)七呂建設
<特長>
世界的建築家・隈研吾氏設計による鹿児島初となる店舗「コミュニティBOOKカフェ」
<フロア概要>
1F カフェスペース(壁一面の県産材シェルフ)
2F カフェスペース
3F 商談スペース(間接照明に柔らかく
照らされる木のアーチ)
4F(屋上フロア)
桜島を望む開放的なルーフガーデン<COMPANY INFORMATION>
代 表:七呂 恵介
所在地:鹿児島市石谷町1260-8
設 立:1963年5月
資本金:8,700万円
売上高:(22/4)約77億2,117万円
▶七呂建設|注文住宅を鹿児島・宮崎・熊本で建築する工務店 デザイナーズ住宅法人名
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