ソフトバンク孫氏とクラウレ前副社長「対立の裏事情」(前)
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「ゴネ得」とは、ゴネることで得をすることをいう。過去最大となる1兆7,000億円の最終赤字を出したソフトバンクグループ(SBG)だが、すこぶる気前がいい。副社長を1月に退任したマルセロ・クラウレ氏に、退職金と長期報酬合わせて127億円を支払う。クラウレ氏はゴネて、ゴネて、ゴネまくり、得をしたのである。
クラウレ氏、10億ドルを要求
米ブルームバーグは6月24日、「ソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ前副社長の退職金と今後受け取る報酬見積額の合計が約127億円になる」と速報で伝えた。
ソフトバンクグループ(株)(SBG)は同日、2022年3月期の有価証券報告書を公表した。それによると、クラウレ氏の退任費用として45億6,700万円を3月末時点で計上。退任費用とは別に、クラウレ氏に対する長期インセンティブプラン(報酬制度)として80億9,700万円を見積もった。クラウレ氏が担当していた「ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド」の業績に連動する報酬で、同ファンドの解散により金額は確定する。80億円は3月末時点のファンドの業績に基づいた見積額だ。
クラウレ氏の21年3月期の報酬額は17億9,500万円。その巨額報酬の約7倍だ。
SBGは今年1月28日、最高執行責任者(COO)のクラウレ副社長が退任したと発表した。退任の理由は明らかにされていない。
米ブルームバーグ通信(1月27日)は、クラウレ氏が米携帯電話スプリントの立て直しなど自身の功績を主張して最大10億ドル(約1,150億円)の報酬と自ら率いる中南米向け投資ファンドの独立を求め、孫正義会長兼社長と衝突していたと報じた。
それにしても10億ドルの報酬とは、よくぞ吹っかけたものだが、ゴネまくった甲斐があった。退職金と長期報酬合わせて127億円をゲットしたのだ。
後継者のアローラ氏に165億円の役員報酬
クラウレ氏がゴネまくったのには、それなりの伏線がある。
今年8月に65歳を迎える孫正義氏は終身トップに意欲満々だが、かつては、後継者探しを「最重要テーマ」として掲げた時期があった。
最有力候補は、14年に招聘した米Google幹部だったニケシュ・アローラ氏。孫氏は海外投資事業を担ったアローラ氏を後継者と公言し、15年3月期に165億円の役員報酬を支給して話題になった。
だが、投資家グループが「アローラ氏は報酬に見合った成果を出していない」として同氏を解任するよう求める書簡を送った。アローラ氏も孫氏の投資手法をたびたび「趣味的」と揶揄するなど両者間の亀裂が深まり、アローラ氏は2年後の16年に退任した。
クラウレ氏にすれば、さしたる業績を上げていないアローラ氏にSBGは165億円の大盤振る舞いをした。抜群の実績を挙げた自分が、アローラ氏の報酬を下回るのは納得できないと、不満を募らせたのも無理はない。
(つづく)
【森村 和男】
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