【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(5)】単著書・単著論文のあきれた実態(その2)──学内業務連絡も写真だけでもわが『論文』
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たとえば、朔学長の255番「論文」。タイトルは「医学部長就任のご挨拶」で、掲載誌および巻号頁は『烏帽子会会報』60号5ページとある。
「烏帽子会」は福大医学部の同窓会である。医学界で活躍している会員も多いことだろうから、「医学部長就任のご挨拶」と銘打って研究成果が報告されているのかもしれぬ。そう期待を込めて、同会HPにアップされているバックナンバーで現物を確認したところ、下に画像で示すとおりのものだった。タイトルの「医学部長就任のご挨拶」以外の何ものでもないではないか。
だが、255番「論文」=「医学部長就任のご挨拶」は600字はあるぶん、まだ“執筆物“といえるだけの様相はまとっている。が、たとえば149番「論文」として掲げられている「医学部長メッセージ」はどうか。掲載誌は『福岡大学学園通信』57号とある。同誌は福大が年2回(2019年度以前は年4回)発行している広報誌で、毎号の表紙にはキャンパスライフを満喫する、学部もさまざまな在学生たちの写真が並ぶ。朔学長はこんな媒体にも研究「論文」を寄稿し、学生たちが学業に励むよう「メッセージ」を送っているというのか?!
――と思い、ネット上で公開しているバックナンバーを開いてみたところ、たしかに8ページ目から「新年度を迎える皆さんへ――副学長、事務局長、各学部長、教務部員、学生部長、図書館長 からのメッセージ」というコーナーがある。そして、朔学長の「医学部長メッセージ」=149番「論文」とは、なんとこれのことだった。
148番「論文」にいたっては、2017年10月に学内で行われた役職員選挙で選任された教職員の氏名をリストにしただけの、単なる業務連絡記事であった。そもそも、書誌情報では朔学長が「著者」とされているが、同記事を執筆したのはこれを発行している「企画部広報課」のメンバーではないのか。あるいは、朔学長はその名が記されるだけで、そこの箇所が自身の「研究業績」になるとでもいうのだろうか。
261番「論文」にいたっては、写真が掲げられただけでも自分が執筆した「論文」になるようだ。百歩譲ってこれを1個の業績=作品と捉えるなら、それはカメラマン氏と「福岡大学学園通信」編集スタッフに帰されてしかるべきではないかと思うのだが、ここではもはや世の常識は通用しないのだろうか….。
そもそも「研究業績リスト」とは何かということについて、朔学長とわれわれ一般人とでは認識の相違があるのかもしれない。それを示すと思われる例が753番「論文」である。『医学と薬学』という医療雑誌の67巻6号926ページに掲載されている「『医学と薬学』編集顧問」というタイトルの「論文」ということだが、少なくとも医学上の研究論文ではないことは明らかである。
そして、詳細情報をクリックしてみると、論文としての種別は「編集顧問」だそうである。論文種類にはその形式や目的に即して「原著論文」「総説」「症例報告」「単報」などがあるが、「編集顧問」なる論文カテゴリーなど筆者は寡聞にして知らない。おそらく朔学長は当該雑誌の作成・発行にあたり「編集顧問」を務めたのだろう。だが、申し訳ないが、ここは自分がこれまで有した肩書きを記す欄ではない。
あるいは、かれの中で業績リストと肩書きリストとは一体のものなのかもしれない。同誌2011年65巻5号、66巻、63巻4号、63巻6号でもかれは編集顧問を務めたらしく、各々885番「論文」、886番「論文」、1055番「論文」、1056番「論文」としてリストに掲げている。もう画像で示すことは控えるが、論文としてのカテゴリーは案の定、全て「編集顧問」となっていた。各々ページ数が記されていることから、何らかの執筆物(編集後記のようなものか?)があることは確かだが、少なくとも同誌はそれらを「論文」とはみなしていない。オンラインで公開されている各バックナンバーの「論文一覧」をご確認いただきたい。そこにこれらは入っていないはずである。
<中略>
かくなる様相を呈した「研究業績」リストが浮き彫りにするのは、敬虔な学究の徒の姿ではないだろう。ここに見出せるのはむしろ、学界のマナーも世の良識も意に介さない、なりふり構わぬひとつの“誇大広告“であり、自己顕示欲の具現ではあるまいか。その象徴が、2018年から2019年の単著「論文」として合計11回リストアップされている、「あとがき」なる執筆物群である。すべて掲載誌は「NPO法人臨床応用科学」なる団体が発行している「Vascular Street」とある。ネット検索したところ、下の画像のようなページにたどり着いた。福大医学部イチオシの雑誌のようだ。
バックナンバーを閲覧すると、学術誌というよりは福大医学部の教員たちの活躍を紹介する数ページのパンフレットのようなものであることがわかる。「あとがき」という表題の記事はどこにも見当たらないが、各号の最終ページ最下段に「Prof. Saku’s Commentary」(朔教授から一言)なる小さなコラムのようなものがあり、リストに記されたページ数からしてこれが「あとがき」のことであるのは間違いない。以下、この観点から朔学長の単著「論文」の実態をお見せしよう。
まず5番、8番、9番、13番「論文」。なお、これらは論文カテゴリーとして「その他」とある。本シリーズのイントロですでに示してある通り、福大HPの業績リストは「著書」「論文」「報告書」「学会発表・講演」「その他」の5つの大カテゴリーに分類してリストアップする仕様になっているが、その大区分からして「その他」に含めるべきではないのか。筆者ならそもそも研究業績表に加えたりはしないが。
次に示す22番「論文」や30番「論文」などは、論文の種類として「総説」とされている。ちなみに「総説」とは、「特定の分野や主題について、関連文献、資料に基づいて総括的に論評した記事」(医学中央雑誌刊行会)のことをいう。
さらに39番「論文」。朔学長にとってはこれが「原著論文」――「医学・歯学・薬学・看護学・獣医学およびその関連分野に関わる研究、開発、調査で、独創性、新規制のある文献で、著者名と所属機関名が必ず記載されており、目的、対象、方法、結果、考察、結論で構成されているもの」(医学中央雑誌刊行会)――なのだそうだ。
きわめつけは、同じく「原著論文」と定義された38番「論文」だ。著者は朔学長お一人ということだが、現物はなんと「Prof.Miura ’s Commentary」(三浦教授から一言)!われわれがこれまでの記事を通じて画像で示してきたリストの断片をもう一度見ていただければわかるが、三浦氏は朔学長との「共著」書・論文が非常に多い。また、何回か前の記事で、朔学長が共著者として現物にも自分の名が記載されていないにもかかわらず、何本かの論文を自分の論文としてリストアップしている件を報告したが、その数本はすべて三浦氏の論文である。朔氏にとって三浦氏は、もはや自分との区別がつかないほどに一心同体なのか?!
いや、部下のコメントを自ら代筆し、麗しい師弟愛を表現したかもしれぬ。失笑を買うことも恐れず共著「論文」として次のようなものを掲げるほどに、弟子想いの朔学長なのだから。
そして、これらの「あとがき」を掲載している「Vascular Street」の発行元の「NPO法人臨床応用科学」とは、朔学長自身が主催している法人であったというオチで、本シリーズを締めくくりたい。所々少々失礼な言い回しがあったとしても、当然お許しいただけることだろう。学長ご自身、あの失礼千万な演説で成績優秀な後輩たちの奢りを戒め、福大の、いや日本のアカデミアの発展に寄与する人材に成長するよう叱咤激励なさった。筆者も憚りながら、末端とはいえ長くアカデミアに属し、国や財団による援助も何度か受けた身。その恩に報いるためにも、学生や若い研究者が真似をしてわが国学術界の劣化を招きかねないあのような「研究業績」リストを放置しておくわけにはいかない。朔学長におかれては、自身のリストが閲覧者にここまで指摘してきたような疑念を喚起するものであることを真摯に受け止め、速やかに学界のマナーに準拠したまともな業績リストを公表いただきたい。(了)
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