ファクトチェック~コロナ・パニック、ウクライナ紛争(後)
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(2)-1 ロシア・ウクライナ紛争
2月24日の突然のロシアのウクライナ侵攻以来、世は「ロシア極悪」「ウクライナ可哀想」一色だが、ことは数百年以上にわたる実に複雑な世界治政・異文化の戦い。これを知らずしての「武器援助」はことの解決にならない。これはすなわち「宗教紛争」、すなわち、日本にとっては出る幕のない紛争である。唯一すべきは憲法九条を楯としての「平和仲介」である。
2018年10月15日、コンスタンチノーブル総主教(イスタンブール)がウクライナ主教のロシア主教からの「離脱」を承認したことに宗教紛争の根源がある。
「政教一致」のかの地域にあっては「宗教」=「政治」である。ロシア主教の洗礼を受けたプーチン大統領はその「代表」である。ロシア主教からするとウクライナ主教が傘下から「脱退」することは許せないことなのだ。
(参考記事:
【第254回」 ロシア・ウクライナ紛争は勝(すぐ)れて宗教紛争 - 浜地道雄の「異目異耳」)日本における、報道・解説には「コンスタンチノープル」という極めて重要なキーワードがひとことも登場しない。
(参考記事:
【第257回】松本道弘氏とConstantinopleで語りあった「言葉と文化(宗教)」 ~ ロシア・ウクライナ紛争に想う - 浜地道雄の「異目異耳」
【第112回】深遠なることば ECUMENISM - 浜地道雄の「異目異耳」)ノーベル平和賞2017を受賞した国際NGOネットワークはICAN(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons)だ。
そのスイス・ジュネーブにある本部の事務所ビルはEcumenical Centerという。耳慣れない言葉だが、(キリスト教)異なる宗派を統一するという極めて重要なことばだ。
その傘下には、たとえば、非常に重要な世界教会協議会であるWCC(World Council of Churches)、そしてルター派世界連盟(The Lutheran World Federation)など、そうそうたる国際機関が入っている。さらに、Ecumenical Patriarchate Representation 「世界総主教座代表部」も。かつて東ローマ帝国、ビザンツ帝国の首都であったコンスタンチノープル(イスタンブール)の総主教座で、1453年の同都陥落後のオスマン帝国支配を生き抜き、今もトルコ共和国の管理下で存続し、東方正教会の世界的名誉総主教座の地位にある。
(2)-2 紛争の経済的インパクト
ロシア極東で、日本企業(三井物産・三菱商事)が出資している液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン2」。
ロシアのプーチン大統領がその運営をロシアの新会社に譲渡する大統領令に署名し、あらたに設立するロシア企業に移譲するよう命じた
各紙は一斉にこのことを取り上げ、ロシアを批判し、日本のエネルギー安定供給への悪影響を与えると、動揺を報じている。
が、改めて経緯・事実を検証してみよう。難しいことではない。
ウクライナ侵攻で対ロ制裁を強める日本への対抗措置とみられる。
日本政府は米国に追随し、在日ロシア大使館員6人を国外追放している。
また、これまた米国に追随し「経済制裁」を課した。
これに対して、相手(ロシア)が「カウンター行為」に出ることは容易に予測できたことである。
(2)-3 岸田文雄内閣総理大臣が軍事同盟NATO総会に出席
6月26-28日、ドイツ・エルマウで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)は「中国、ロシアへの警戒」を表明した。参加した岸田首相はあまつさえ会議の冒頭「ウクライナは東アジアかもしれない」と発言した由。
しかし、ここには大きな「誤解」「認識のズレ」がある。
前述(2)-1の通り、「ロシア・ウクライナ紛争」は「宗教をめぐる紛争」である。
それをもって、ロシアが東アジアに侵攻してくる可能性に論議を直結することに正当性はない。
G7会議の後、岸田首相は6月29日、スペイン・マドリッドにおけるNATO首脳会議に出席した。日本国総理大臣としては初めてのことである。
NATOとはいうまでもなくNorth Atlantic (北大西洋)の「軍事同盟」である。そこに、太平洋に面したアジアの一員である日本国の代表が参加する意味は何なのか?「オブザーバー」としてもその必然性はない。
知の巨人。N チョムスキーMIT教授は「ロシア・ウクライナ紛争の根は米国の海外軍事政策の誤り」と喝破している。(参考記事:【第252回】 ロシアのウクライナ侵攻を語るチョムスキー教授 - 浜地道雄の「異目異耳」)ベトナム、イラク侵略、アフガニスタン~の侵略の失敗を指す。
そのイラク侵略は「カーブボール」(暗号)というイラク人亡命ペテン師の
「ねつ造」大量破壊兵器」証言によるものだ。(参考記事:
【第226回】9・11同時多発テロ ⇒ 「カーブボール」考 - 浜地道雄の「異目異耳」)「すばらしいアメリカ。が、ダメなアメリカ」、
「ダメなアメリカ、が、すばらしいアメリカ」。駐在を含めて家族ともども過ごした筆者の実感である。
米国の海外軍事政策に盲従の危険性はいよいよ大きい。
(2)-4 日本ができること、すべきこと
11月のG20サミットの議長国であるインドネシアのジョコ大統領は6月29、30日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)とロシアの首都モスクワを訪問。ゼレンスキー大統領、プーチン大統領と相次いで会談。停戦に向けた対話を促し、G20サミットへの参加を求めた由。
これこそが、唯一の被爆国であり、かつ、平和憲法9条を擁する日本が力説し、行動すべきことである。
6月21~23日、オーストリア・ウィーンで開催された、TPNW核兵器禁止条約の第一回締約国会議に、日本はオブザーバー参加すらしなかった。
8月、広島・長崎での祈念式典に今年はロシアを招待しないとのこと。
他方、岸田首相はG7において来年の同会議の広島での開催を提案した。また、8月にNYC国連で開催のNPT(核兵器不拡散条約)準備会議に出席を表明した。
NPT参加がコロナ禍で実現できなかった筆者にはことのほか、感慨深い。
(参考記事:
コロナは本当に怖いのか? ~ナイトの「不確実性論」から見る)おわりに
Fact Check=事実を知り、検証したうえで断ずれば、現下の社会混乱(経済、観光、インバウンド、教育)を冷静にみれば正当性はない。
そして「次の世代に」も視野にいれて現象を「グローバル」に観測、分析をすれば「ビジネスの前提も平和である」真理を確信できる。
(参考記事:
【第62回】 「ビジネスも平和が前提ですね」 - 浜地道雄の「異目異耳」)PS: 筆者はビジネス一辺倒。すなわち、医療、政治などの研究者、専門家ではなく「非専門家」だ。
すなわち、「裸の王様」を見破った少年のように「事実に基づき」「純粋な目」で観察をする。
本稿は筆者が所属する団体、企業とは別の「個人の見解」である。
(了)
<PROFILE>
浜地 道雄(はまじ・みちお)
1965年、慶応義塾大学経済学部卒業。同年、ニチメン(現・双日)入社。石油部員としてテヘラン、リヤド駐在。1988年、帝国データバンクに転職。同社米国社長としてNYCに赴任、2002年ビジネスコンサルタントとして独立。現在、National Geographic/Cengage Learning kk, Project Consultant EF Education First Japan, Senior Advisor.関連キーワード
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