コロナ禍でも過去最高業績を達成 「IP軸戦略は伊達じゃない！」（中）

（株）バンダイナムコホールディングス

　同グループは現在、バンダイナムコHDのほか、子会社104社と関連会社16社で構成。セグメント別には、ネットワークコンテンツや家庭用ゲームの企画・開発などを行う「デジタル事業」、玩具や模型などの製造・販売を行う「トイホビー事業」、映像・音楽コンテンツなどの企画・制作を行う「映像音楽事業」、アニメーションの企画・制作や著作権・版権の管理・運用を行う「クリエイション事業」、アミューズメント機器の企画・開発やアミューズメント施設の運営を行う「アミューズメント事業」の5つのセグメントのほか、各事業に関する流通やサポートを行う「その他」で構成されている。さらに、事業会社の集合体の単位として「ユニット」を用い、前述の5つのセグメントを3ユニットに振り分けており、「エンターテインメントユニット」はデジタル事業とトイホビー事業、「IPプロデュースユニット」は映像音楽事業とクリエイション事業、「アミューズメントユニット」はアミューズメント事業となっている（【表1】参照）。

　同グループでは、これら3つのユニットと5つの事業セグメント体制の下、「IP」を最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化を図る「IP軸戦略」を軸に、事業活動を展開している。IPとは「Intellectual Property」の略で、キャラクターなどの知的財産のこと。同グループでは、保有するオリジナルIPまたは版元から預かったIPを、ファンに向けていろいろなかたちで商品化することで、さまざまな領域での事業を展開している。

　主なIP別の売上高の推移（【表2】参照）を見ると、IPによって流行り廃りがあるため、すべてが右肩上がりとはいかないが、全体の合計は増収基調で推移している。なかでも、とくに成長が著しいのは、国内外で高い人気を誇る「機動戦士ガンダム」と「DRAGON BALL」の2つで、直近の22年3月期はそれぞれIP売上高1,000億円を達成している。ほかにも人気の高いIPの数々が控えており、こうした強力なIPを多数保持していることが、グループの強みとなっている。

22年3月期は過去最高、今期は反動減を予想

　同グループでは、20年3月期と21年3月期はコロナ禍の影響でやや鈍化したものの、それ以外の期では売上高は右肩上がりで推移しており、12年4月から進めてきたIP軸戦略が順調に寄与していることがうかがえる。

　直近となる22年3月期の売上高は8,892億7,000万円（前期比20.0％増）と、過去最高を達成。IP軸戦略を進める前の12年3月期の売上高4,542億1,000万円と比べて、約2倍の規模まで成長を遂げている。また、22年3月期においては営業利益1,254億9,600万円（同48.2％増）のほか、経常利益1,336億800万円（同52.5％増）、当期利益927億5,200万円（同89.7％増）といずれも大幅な増益となり、利益面でも過去最高となった。

　セグメント別に見ると、エンターテインメントユニットのデジタルとトイホビーの両事業が過去最高業績を達成。デジタル事業では、家庭用ゲーム「ELDEN RING」の大ヒットなど新作の好調に加え、年間を通じてリピート販売が好調に推移。トイホビー事業では、ガンプラやコレクターズフィギュアなどのハイターゲット層（大人層）向けの商品や、主力IP商品、玩具周辺商材などが好調に推移したほか、海外向けの展開も好調だった。21年3月期にコロナ禍の影響を大きく受けた映像音楽事業やアミューズメント事業については、市場の回復に加えて、各現場での環境変化への対応が奏功し、業績が回復。クリエイション事業については、ガンダムなどの新作映像制作に取り組むとともに、ライセンス関連の収入が増加した。

　今期（23年3月期）は売上高8,800億円、営業利益1,000億円、経常利益1,010億円、当期利益700億円と、わずかながら減収減益を予想。好調だった22年3月期の反動が出てくると見込んでいる。

（つづく）

【坂田　憲治】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：川口　勝
所在地：東京都港区芝5-37-8
設　立：2005年9月
資本金：100億円
売上高：（22/3連結）8,892億7,000万円