2024年11月28日( 木 )

【権力者は黄昏を悟れ(3)】清和会の栄枯盛衰、今後の行く末は

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「暗殺者」山上徹也は意外と賢かった

 「暗殺者」山上徹也容疑者が犯行について語り始めた。彼は非常に緻密に計画を練りあげ、作戦を具体化していったようだ。7月15日付の西日本新聞朝刊を引用してみよう。「母親が世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)に入信して多額の寄付をし、家族が崩壊した。教団を(韓国から)招き入れたのが岸信介元首相。だから(孫の)安倍首相を殺した」と供述しているとか。長い時間をかけて計画を練りあげて実行する忍耐力には頭が下がる。しかし、晋三氏の運がつきたから暗殺が成功したのである。

岸信介抜きに統一教会の大躍進はなかった

 どうしたのであろうか!晋三氏の祖父・岸信介氏は、統一教会に異常に肩入れしてきた。統一教会は朝鮮半島でキリスト教を土壌として発生し、開祖・文鮮明氏が1954年に立ち上げた。

 岸氏は文氏を栄美麗(蒋介石の妻)に紹介した。この栄氏が宗教の中身なのか、人柄なのかは知らないが、文氏を気に入った。早速、ニューヨークに一緒に飛び、当地の社交場を連れ回し、1兆円(時間がかかったが)のカンパが集まったと言われる。これが統一教会の躍進のもととなった財源だと関係者は証言する。アメリカの支配者たちの一部は「朝鮮半島支配に統一教会を活用できる」と計算してサポートし始めた。

 また岸氏は日本でも統一教会の為に各方面にコネクションを築いていった。宮内庁への紹介も画策したようである。不思議というか、賢明な安倍晋太郎氏は、あまり統一教会に深入りしなかった。だが孫にあたる晋三氏は“ズブズブの関係”を築いた。裏で政治献金をもらっていたかどうかは定かではないが、暗殺者・山上が「安倍元首相は統一教会の広告塔」と判断したほど癒着は目に余るものであった。家族が自殺し、経済破綻した状況下、長い期間、忍耐強く計画を練り、目的を遂行したのである。

私憤による動機以外に考えられるか?

 晋三氏が暗殺された日に海外から帰国した経営者Aは、成田国際空港に到着したときにTVの緊急速報を目にした。「安倍元首相が銃弾に倒れる」という字幕が画面に表示されていたのを目の当たりにして「あの話は本当だったのか!」と驚き、わきの下に汗が流れていたことに気づいた。

 Aは日本を発つ前、友人から何気なく「安倍さんが狙われているんだって」という話を耳にしていた。当時は気にもしていなかったのだが――。「今となって考えると単なる警備ミスとは考えられない。裏で権力側たちが“安倍パージ”に動いたような感じがする」と語る。読者の方々はどう思われるだろうか!おそらく警察などの調査機関は山上単独犯行で「ジ・エンド」にするであろう。

小泉純一郎氏は清和会「復興の祖」

 さて安倍派であった清和政策研究会(清和会)は今後、どうなるのか?この会は保守傍流といわれ。日本民主党の「反・吉田茂」路線を掲げてきた。親米を基調として自主憲法論、憲法改正論の立場を堅持してきた。だから昔は台湾人脈と懇意にしてきたのだが、中国人脈にも精通してきた。

 清和会で最初に総理大臣になったのが、福田赳夫(たけお)氏である。1976年12月から1978年12月の2年間、総理を務めたが、この栄光の時代から一転、暗い闇夜の時代が続くようになる。

 原因は経世会(田中派)との暗闘であった。田中角栄・福田赳夫両氏は反りが合わなかった。田中派を引き継ぎ経世会のリーダーになった竹下登氏が権勢を誇っていた時代、対抗する清和会のリーダーは安倍晋太郎氏である。同氏は惜しくも病に倒れて死去する。前回も触れたが、晋太郎氏が政権を担っていたら晋三氏が総理に就くことはなかったであろう。その後、三塚派、森派、町村派と続き、森喜朗首相を誕生させる(10カ月政権)が、会派としては停滞時期であった。また自民党自身が野に下ることもあった。

 そこで救世主として登場したのが、小泉純一郎氏である。福田赳夫氏の秘書経験を踏まえて政界入りするが、派閥の要職には執着がなかった。幾多の自民党総裁選挙に敗北してきたが、「自民党をぶっ壊す」のフレーズで2001年4月から2006年9月まで総理の座に就いた。いうなれば清和会の復興を担ったのである。5年間にわたる小泉政権の期間に晋三氏は様々な要職に抜擢され、鍛錬してきた。総理総裁へ向けた修練を積んだのである。

派閥の栄枯盛衰の歴史、清和会はどうなる

 小泉純一郎政権誕生以降、清和会(細田派から安倍派)は、我が世の春を謳歌してきた。最大派閥として好き放題にしてきたが、晋三氏を超える人材が育っていなかった。どんぐりの背比べの状況では、一致団結を続けるのが難しい。

 暗殺者・山上による襲撃の影響は清和会(安倍派)に及んでいく様相である。栄枯盛衰の法則の下では清和会は衰退するのが自然だが、さてどうなるか!このシリーズの冒頭で登場した美祢氏は「この際、古株である麻生、二階“両老害”政治家は引退して体質改善を図ることが必要である」と指摘した。

(了)

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