2024年11月22日( 金 )

【福岡IR特別連載90】長崎IR、隠せば隠すほど新たな墓穴を掘っている

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 先月、長崎市の市民団体は、長崎IRの“区域認定申請書提出”に関する外注コンサルタント費用約1億円の公金支出の停止を求めて、県行政に「住民監査請求」をした。

 理由は、県が国に提出した“区域認定申請書”の内容は、その中身の信頼度が極めて低く、国から承認される可能性はなく、今後の認定審査のためのコンサルタント料支出などは、一切無駄な公金だと判断されたからだ。このように、ほかの候補地でもよくある無知な人たちの感覚のズレた「ギャンブル依存症」に対する反対とは異なる。

 これは誠に至極当然な理由であり、長崎県行政が投資開発事業予定者のCAIJ(カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン)との間で、2021年8月に締結済みの本件「基本協定書」ならびに投資家から出ているとされる“コミットメントレター"などを、県行政がいまだ一切開示しないことから派生しているのだ。

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長崎IR、また墓穴を掘っている

 これらは、既報の毎日新聞社による「公文書開示請求」と基本的には同意語である。しかし、本来なら、現地の政治行政を監視する役目の地元長崎新聞社などが率先してやるべきことだが、同社らは何かに忖度し、メディアとしての役目をはたしていない。

観光客主体の集客計画は最初から間違っている

 ここにきて、さらなるコロナ感染の第7波が到来した。政府も諸々の観光事業対策を再度延期せざる得ない状況になっている。また、本件候補地ハウステンボスの親会社HISはこの間に創業以来の巨額な赤字を出し、危機的な状況にある。

 筆者は、当初から解説しているように、本件は国内外観光客主体の集客計画などはあくまで補完的なもので、基本は巨大な後背地人口を有する大都市圏でないと間違いなく採算は合わないと重ねて言っている。もう、誰しもが自身の経験値からこれらを理解していることだろう。

 東京都を中心とする関東都市圏、大阪市を中心とする関西都市圏、福岡市を中心とする北部九州都市圏の3カ所しか本件の採算は絶対に取れない(名古屋市中心の中部都市圏は文化が異なる)。当初の北海道苫小牧市に、大阪市の隣の和歌山市、長崎ハウステンボスがある佐世保市などは本件計画を立ち上げる時点から無理がある。

 これら候補地の人口減少に歯止めをかけるなどの気持ちは理解するが、所詮、地方の人口減少のなかでの無謀な計画を立ち上げており、それぞれがこの間、税金の無駄遣いをし、巨額な公金を支出している。従って、長崎市市民がこれ以上の無駄な公金を使うべきではないというのは市民感情からは当たり前の話なのだ。

 長崎県行政はまだ隠して隠して、隠し通して馬鹿をやり、無駄な公金支出で「さらなる墓穴を掘るのか?」と言っているのだ。

長崎県庁 イメージ    一方、世界では、ロシアのウクライナ侵攻とEU諸国のエネルギー問題に、米国のインフレによる利上げなどによる影響で、為替レートも1ユーロが1ドル、日本円は140円、ユーロ安に円安、米国ドルの1人勝ちだ。最初から本件は「安倍・トランプ密約」により、米国以外のカジノ事業者は対象外だと言ってきた。

 長崎IRの事業予定者カジノ・オーストリアの本国オーストリアのユーロ経済圏への影響も日々深刻な状況となっている。従って、日本でIRをやっている場合ではなくなってきているのだ。もともと当初からその財政能力などはないのだ。これについては次号でさらに解説する予定である。

 ゆえに、最初から長崎県行政はほぼすべてにおいて誤っている。またCAIJもやれるとは思っていなかったのだ。その結果、「日米経済安全保障問題」に関係者全員が気づけず、当初は中華系の大手カジノ事業者を当て込んでいたものを、やむを得ず現在のCAIJを選ぶこととなってしまった。

 誠にお粗末な話だ。この中華系2社からの長崎県行政に対する訴訟問題(入札時の公正性を問う)は、いまだくすぶっている状態である。

 要は、行政と議会、さらに福岡財界の一部関係者も、これらを熟知していても、途中で本件を止められないのである。従って、いまだお金が付いていない乱暴な内容の計画申請書などを「公」に開示できるはずがないのだ。本件すべてを国の判断と責任に委ねたいのが本音である!

 重ねて解説するが、今回の「区域認定申請書提出」は彼らの身の保全を図ったことに過ぎないのだ。近い将来、国による“非承認”という回答を待っていて、誰も承認されるなどと思っておらず、自分たちの責任ではないとするかたちをつくったことが、本件申請書提出の主たる目的になっているのである。

 これらは最初から現在に至るまで、ど素人集団による愚かな始末なのだ。

【青木 義彦】

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