【福岡IR特別連載92】長崎IRを利用した転売、HIS澤田氏のひとり勝ち
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昨日のNHKのニュースで、佐世保市の朝長市長が記者の質問に対して「ハウステンボス売却の話は今回の報道で初めて知ったが、同園の資本構成ならびに所有者が代わっても一切IRに影響することはない」と公言していた。
筆者は、この答えを予想はしていたものの、瞬時に飛び出した発言だったため「何と愚かで、お人好しなのだろう」と大変驚いた。もし、HISの澤田氏がこれを聞いたら、大変安堵するとともに自身の戦略に対しての確信をより深めたことだろう。
6月9日掲載の「【福岡IR特別連載86】長崎IRの候補地ハウステンボスは危機的経営状態」を再度見ていただきたい。
筆者は、HISがハウステンボスを継承した当初から(野村プリンシパル・ファイナンスからHISが継承した時)、彼らの目的はいずれかの時点で付加価値を付けて「転売」することが最大の目的であると解説している。
従って、近々それが実現したら、長崎県行政および議会に福岡財界の一部関係者はどうするのかと問いかけていたのだ。当然、裏付けがあってのことである。これらを想像もせずに、国に対して「区域認定申請書」の提出をするなど“愚の骨頂"だと指摘している。あまりにもお粗末な話だ。海千山千の人間たちと、ビジネス経験豊富な澤田氏に、絶対に勝てるはずがない。
前述の朝長市長発言は今回の「ハウステンボス売却・転売問題」を手助けすることになり、HIS澤田氏の当初の戦略通りとなった。たまたま、コロナの再感染拡大時であり、彼らにとっては「背に腹は代えられない」ので、HIS澤田氏の信義・道徳上の問題はあるにしても、ビジネスとして責められる問題ではない。これは以前も同様の解説をしている。
澤田氏の手のひらに乗りっぱなしの長崎県行政と議会関係者
前述の朝長市長の発言も同様で、なぜにこれらに気がつかないのか?
長崎県行政と議会はハウステンボス隣接地を約200億円で購入することをすでにHIS澤田氏と約束しており、それを今回の香港中華系投資企業「PAG」(会長兼CEOのWeijian Shanは有能な中国人経営者)が事実上肩代わりして、先にHISに支払うことになる。もしIRプロジェクトも、この約束もなければ、ハウステンボス売却の付加価値は相当下がり、安価なものとなる。しかし、HISはタダ同然で継承しており損はせず、同園は閉鎖危機を免れ、生き残ることが可能となる。IR誘致開発事業は澤田氏の意のままとなっており、IRを切り離して同園の再生に特化すべきだろう。
前回の「【福岡IR特別連載91】長崎IR、予測以上に早かったハウステンボスの『転売墓穴』」でも解説しているが、長崎県行政の昨年の本件公開入札で、恣意的に中華系投資企業2社を排除し、訴訟問題に発展しかねないことから、現在のCAIJ(カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン)を選択していることとは、”辻褄“が完全に合わなくなる。重ねて説明するが、「日米経済安全保障」問題は、ウクライナ問題に加え、日中覇権争いのなか、IR誘致開発の絶対条件なのだ。一体、地方の役人と政治家はどこをみているのか。
簡単にいえば、長崎県行政も議会も、大石知事、当該地の朝長市長、さらには議会もHIS澤田氏の「蚊帳の外」に置かれて、"寝耳に水"の状態なのだ。最初から澤田氏の"手のひらの上"でまんまと転がされているだけ。到底地方の役人と政治家がコントロールできる相手ではないのである。
本件については政府が指導している国内大手の幹事銀行ならびに幹事デベロッパーが主要な株主であることが必須だと言っているのであり、CAIJが中心のプライベートエクイティ投資など論外だ。それゆえ、澤田氏は区域認定申請書否決前という絶妙のタイミングで最大の付加価値を付けて売却・転売を仕掛けたのである。
米国のCBRE(日本法人は元・生駒商事)にしても、香港のPAGにしても、これらの不動産に絡むマネーゲームが本業の会社である。いずれも自身で経営する気などあろうはずがない。こんな簡単な理屈が行政などの組織人にはまったくわからないのである。
こんなお粗末な役人たちによる「騒動プロジェクト」が、国から承認など得られるはずがない。HISの澤田氏は、それを百も承知であり、福岡財界の一部・九州電力の松尾氏と九州経済連合会名誉会長・麻生泰氏には事前にHISから直接または間接的に伝わっているものと考えられる。
また、すでに、同園内のエネルギーセンターも、過去とは異なり、HISは以前から公にその売却意向を示していた。よって、九州電力も西部ガスも地元住民への直接的な責任は回避できている環境なのだ。それぞれの関係者はホッとしていることだと筆者は推測する。
長崎県行政と大石新知事、朝長市長は、このハウステンボス売却転売問題は、今後の自身の政治生命に関わることだと肝に銘じ、より大きな墓穴を掘らずに勇気をもって本件IR事業の中断を早急に決断することが肝要だ。HISが本件売却を公に発表すれば、手遅れになり、遅くなればなるほど追い込まれ、最悪な結果を招くのは必至である。
しかし、重ねていうが地元・長崎新聞以下の報道機関は何をしているのか。メディアとしての本来の役割をはたす最も重要な時ではないか。
【青木 義彦】
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