【福岡IR特別連載93】長崎IR、寝首をかかれた長崎県と佐世保市行政
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前回、NHKのインタビューにおける佐世保市・朝長市長の発言(7月20日)、「ハウステンボス売却の話はメディアの報道で初めて知った、しかし、資本構成ならびに所有者が代わっても、本件IRには一切影響しない…」をお伝えした。筆者は、これに対し、"何とも愚かで、お人好しなのだろう“という表現で驚きを隠せなかったと解説している。
この表現の意味を、再度説明したい。まず、この立場の人が、本当に知らなかった(売却話を)としても、それを言ってしまっては身もフタもないのだ。基本的に政治家お決まりの「ノーコメント…」とすべきであり、誠に馬鹿正直な人である!
しかし、この発言は、本件の最たる当事者なのに、これほど重要な案件をHISならびにいずれの関係者からも聞かされていなかった事を裏付ける発言である。それが世界に冠たる公共放送・NHKの電波で報道されたのだ。
この報道は、インターネットなどで世界中に拡散する!従って、中央政府の誰かは観ていただろう。多分、彼は瞬時にそこまでは考えていない!
これを言いかえれば「私は寝首をかかれました」と言っているようなもので、誰もがそう見るだろう。同じく、長崎県知事、県行政も全て「寝首をかかれている」のだ!長崎県が事前に知っていて、本件当該地・ハウステンボスがある佐世保市の首長だけが知らないはずはないのである。
県知事を筆頭に全員がこれを知らなかったのであり、HIS澤田氏から"蚊帳の外"に置かれ、まさに「寝首をかかれた」のだ。
これは普通では考えられないことで、地方行政の政治家たちは何とも愚かであり、お人好しばかりである。他方、民間企業の九州電力・松尾氏たちは、既存の株主と言う立場であるが故に法的にも蚊帳の外には置かれていない。
さらに、朝長市長の「本件IRに影響なし」との発言は、今回の売却・転売先の香港の中華系企業PAGに対しても「お上が熨斗を付けて」NHKの電波を使い、今回の「売却転売話の保証」をしたようなものだ。こんな事だから公開入札後に中華系カジノ企業から訴訟されかねないのである!寝首をかかれたうえに誠に「お人好し」の発言である!
だから、筆者は、HISの澤田氏は"安堵感"でいっぱいだろうと推察しているのである。何故なら、今回の報道は彼らにとっても予期せぬ出来事だとHIS担当者がコメントしているからだ。この発言の真意は不明だが、要は、読売新聞にすっぱ抜かれたものが拡散し、各社一斉の全国報道になってしまったからだ。故に、この朝長市長の発言は、本音で正直なものだが、大変な影響力を持つ発言となったのである。
従って、筆者は、地方の行政や政治家たちでは、彼らのような強かなグローバルビジネスを行う人たちをコントロール出来るはずはないと断言している。HISの澤田氏や、PAGの有能な中国人経営者を相手にわたり合うことなど不可能である。日米経済安全保障、米中覇権争いもわからず、狭い世界で生きている人たちが彼らにかなうわけはない!
故に、このハウステンボス売却・転売問題は、佐世保市長の発言とは異なり、本件IR誘致開発以前の別のものであり、筆者が事前に指摘していた通りの、長崎県行政自らが「墓穴」を掘ってしまった、本件IRの完全な「崩壊」を意味するものだ。
ロシアによるウクライナ問題による影響が大きい欧州・オーストリアのカジノ企業は、長崎IRなどに関わっているような状況下にはない。彼らに世界観があれば簡単に判断出来る話ではないか!
大石長崎県知事、朝長佐世保市長は、本件IR誘致開発プロジェクトの「中断」をこの機に素早く決断するべきだ。今回の問題は、現在、彼らの政治生命が「風前の灯火」であることを確実に意味している。
本件IR事業の崩壊は、根っ子は同じで、国の仕組みにあり
長崎IRは何故、この様な結果を招いたのか?大阪IRを除き、北海道苫小牧市に和歌山市、神奈川県横浜市には、それぞれに理由があるものの、すべて崩壊した。
これらは、最初から間違っているものの、その根底には共通の原因がある。重ねて説明するが、最大の理由は「安倍・トランプ密約」で、米国トランプ大統領が当時の大統領選挙において、大口献金者であるラスベガス・サンズのアデルソン氏(故人)を筆頭に、シーザーズ・エンターテインメント、ウィン・リゾーツならびに大阪IRのMGMをこの国に誘致するのを強く依頼されたことから始まっている。
それについての詳細な解説は省くが、大阪MGMを除いて、全ての米国カジノ企業は既に撤退している。従って、今回福岡IRの「米国老舗カジノ投資企業」のBally’s Corporation誘致は大変画期的で、地元・福岡の民間組織の能力に脱帽するほどの特別な価値があるものだ。
要は、当時の安倍政権が、ギャンブル依存症などを理由に、低俗な"反対の為の反対"を行う反対勢力に配慮して、IR法(関連法含む)の法制下、各当該地管轄の自治体を本件IR誘致開発事業の主権者にしたことが最大の間違いであり、原因でもある。もっと端的に言うと、行政、議会、大企業組織などのコンプライアンスにガバナンス症候群のサラリーマン幹部諸氏が、すべての判断と決断が出来ない現在の環境とその仕組みの原因となっているのだ。
これがこの国の現在の体たらくの主たる原因で、病巣である!前述の米国カジノ企業の日本撤退の原因も、根っこが同じだ。そして、諸悪の根源が金融庁と銀行である!
長崎IRも含めて、日本銀行の円安対処問題など、世の中は「お金」が弾力的、積極的、スピーディーに動かなければ、何事も進まないのだ。
この国の大企業は、お金はいっぱいあるが、内部留保などで表に出て来ないと、政治家やテレビのコメンテーターたちが非難している。それを取り仕切っているのが、本家本元の未だにハンコ文化の封建的な金融庁とメガバンク、地方銀行なのだ。これらは世界中から馬鹿にされ、笑われ続けている!
従って、彼らサラリーマン幹部諸氏は自らの保身が最優先で、誰もが動けなくなっている。役人も同様で、この世界的なコロナ禍に、がんじがらめで権限の無い者が、親方日の丸からの給与とボーナスだけは(年収ベースで平均約300万円の格差)税金で保証されているのである。一般的な市民は大変な環境にあるにもかかわらずだ!これなら上司に抗うより、何もしない方が良いと言うのは当たり前の感覚になる。
重ねて説明するが、橋下徹氏に松井市長、オリックスの宮内オーナーの大阪IRのMGMと、在米の優秀な日本人オーナーが組織する福岡IRのBally's民間企業グループだけが、本件IR誘致開発事業実現の可能性が高いと解説している。東京、大阪、福岡の3カ所における事前の準備作業は、前述のサラリーマン組織では不可能である。この国の根本的な仕組みを変えないと巨大なプロジェクトなどは、大阪と福岡のほんの一部の能力が高いマイノリティの人たちを除いては不可能なのだ。
岸田政権が言う「新たな資本主義」を実現するには、最大の源である金融庁と銀行業務の仕組みを変えることだ。一度失敗したら世間に抹殺されるような仕組みが閉塞感を生み、理解不能の事件を起こすのだ。一度も失敗しない人間など、どこの世界にもいない!
解決策は、この国の組織全ての労働者の勤務評価を"減点主義"から昔の"加点主義"に変える事だ。まずは、金融庁や銀行、行政自らが、速やかにこの評価制度を転換することが、やる気をうみ、閉塞感を減退させる最大の良薬となる。一度や二度の失敗と短所を責めず、個々の長所を伸ばす仕組みを構築することが急務である。
【青木 義彦】
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