2024年08月30日( 金 )

上場企業の守護神「IRジャパン」の驕り 副社長がインサイダー疑惑で退任(前)

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 「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し」。『平家物語』の冒頭の有名な一節である。上場企業の“守護神”、もしくは“用心棒”を生業とするアイ・アールジャパンホールディングス(東証プライム上場)が馬脚を露わした。辣腕の副社長がインサイダー疑惑で退任。あまりのお粗末さに、“天敵”視されてきたアクティビスト(物言う株主)は笑いがこみ上げてきたに違いない。

監視委が強制調査、副社長が不正取引

夜の銀座 イメージ    「物言う株主」への企業対応を行うコンサルティング会社、(株)アイ・アールジャパン(IRジャパン、東京)の元副社長が、持ち株会社(株)アイ・アールジャパンホールディングス(IRJHD、寺下史郎社長)株をめぐりインサイダー取引に関与した疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が、金融商品取引等違反容疑で同社本社や副社長宅などを強制調査した。6月6日、報道各社が一斉に報じた。

 強制調査が入った当時、副社長はIRジャパンの現役の代表取締役だった。そのため、同社は慌てて6月3日に「一身上の都合」で辞任したと発表。ところが週明けの6日、『ダイヤモンド・オンライン』が「株主総会の“参謀役”アイ・アールジャパンに強制調査!」とスッパ抜いたため、やむを得ず同日に「強制調査が行われたのは事実。元役員が嫌疑の対象となっていると理解している。調査に全面的に協力する」とのコメントを発表。社内に不正調査委員会を設置することになった。

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 金商法は、未公表の重要事実を基に株を取引する行為をインサイダー取引として禁じている。法定刑は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金か、その両方。行政処分の課徴金納付命令の対象になると規定されている。

インサイダーの舞台は「夜の銀座」か?

 インサイダー疑惑の人は、元副社長・栗尾拓滋氏(56)。1990年に野村證券に入社。法人営業を中心に歩んだ証券マンで、2013年4月にIRジャパンに転職。法人ビジネスのプロとしてクライアント企業の拡大に貢献、代表取締役副社長や最高執行責任者(COO)を歴任した。

 『週刊現代』(6月25日号)は「杉本彩との写真も流出・・・56歳独身コンサル副社長“夜の大失態”疑惑」と報じた。

 違法行為があったのは昨年4月、「3月期決算が下方修正される」という情報を知人2人に漏らしていた。しかも、その知人というのが「銀座のホステスなど親しい女性ではないか」(証券筋)という情報も飛び交っている。野村證券出身で座持ちのいい栗尾氏は女性によくモテると評判だった。独身で、高級クラブ通いが好きだったという。夜の街で築いた人脈は幅広く、女優の杉本彩と一緒に写った写真も流出している。

 今回のインサイダー取引は、「夜の銀座」で生まれたという説だ。問題となったのは、IRJHDが昨年4月16日に公表した業績の下方修正。21年3月期の連結決算は、売上高が前期比8%増の82億円、営業利益が13%増の40億円、純利益が15%増の28億円と、それぞれ14億円、6億円、3億円の下方修正となった。顧客が上場企業の株取得の実行を遅らせたことで、収益計上がズレ込んだことが響いた。 

 増収増益ながら下方修正。この数字に株式市場は反応。発表日の終値は1万6,890円だったが、翌営業日は1万3,880円に急落。当時、IRジャパンの株価は右肩上がりで上昇していたが、下方修正を機に出来高は3倍強に膨れ、大きく値を下げた。

 この重要事実を知った栗尾氏の知人2人が、下方修正の発表前にIRジャパン株を売却。損失を免れた。証券監視委はインサイダー取引として調査に乗り出したわけだ。

(つづく)

【森村 和男】

(後)

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