2024年11月22日( 金 )

技能実習生の支払い費用の実態(後)

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来日前に定められた研修期間

国際空港 イメージ    来日して働きたい技能実習生は、自国で6カ月間、定められた専門研修を必ず受講し、修了しなければ日本に出国できない。

 研修を受講する半年間は、主に送り出し機関が運営する全寮制の研修所内で他の受講生と寝食を共にし、日本語や日本の文化・習慣を学ぶ。また、日本で働く職種の技術や知識の習得など、半年間で定められた必須の各種カリキュラムを受講後、ビザを取得して日本へ出国できるのである。

噂される多額の債務

 これらのビジネスで常に噂されるのが、違法な中間マージンを搾取するブローカーの存在である。

 留学生や技能実習生の送り出しビジネスにおいて、ブローカーの存在が最も目立っていた10年以上前は、とくに中国人留学生や技能実習生がたくさん来日していた時期で、中間マージンを搾取するブローカーが社会問題になっていた。

 日本で稼げば300万円くらいの借金はすぐに返済できるし、当時の中国人が本国で得る収入とは比較にならないほどの高収入が日本では稼げると言われ、多くの中国人がブローカーに騙されて来日していたのは事実だ。

 当時、日本語学校に就学生ビザ(現在の留学生ビザ)で入学する中国人学生は、学業よりもアルバイトで働いた収入を実家へ送金する、留学という名の下に出稼ぎ同然でお金を稼ぐのが来日する魅力になっていたのである。

ベトナム人向けブローカーへ移行

 今や中国のGDP(2022年)は、アメリカに次ぐ世界第2位で、世界第3位の日本に大きな差をつけている。国民の所得も向上したため、中国人がわざわざ日本に出稼ぎに行くウマ味や必要性がなくなってしまった。

 それも要因の1つとなり、中国人向けブローカーからベトナム人向けブローカーへと移行していった。送り出し機関や金融業者と組んで、とくに政府系金融機関や正規の金融機関から希望額の融資が受けられない人に対してアプローチするのが、ブローカーの仕事のウマ味となっているのが現状である。

人手不足を途上国人材で補う

 中国人留学生や技能実習生の来日が減少し、それに代わって途上国のベトナム人が日本でお金を稼ぎたいと、かつての中国人とまったく同じ目的で来日している。

 人手不足の日本からすれば、途上国の人材を低賃金で雇用できるうえに喜んで働いてくれるため、雇用条件さえマッチすれば、どこの国から働きにきてもらっても、日本企業にとっては大歓迎なのである。

 ただ昨今は人材獲得競争が激化している売り手市場なので、技能実習生は「きつい・汚い・危険」の3K職を避ける傾向にある。

 また、将来的には、日本を選ばず、台湾や韓国などの他国に行くという選択肢もある。そのため日本よりも賃金が高く、日本なら特定技能にしか認められていない転職もできる自由度の高い国が選択肢になっていることに注視するべきである。それとともに技能実習制度そのものの見直しも必要な時期に差し掛かっている。

(了)

【岡本 弘一】

(前)

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