2024年11月23日( 土 )

『脊振の自然に魅せられて』夏の花オニコナスビ

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 脊振山系の一部の標高700m辺りの谷間に、ひっそりと咲く花がある。花の名はオニコナスビ(サクラソウ科)。直径1㎝ほどの5枚の花弁は鮮やかで、エネルギッシュに燃える黄色である。ロート状の花の奥は赤く色付き、地を這う蔓状の茎に花をつける。丸みのある対生(向かう)した2枚の葉は毛に覆われている。

 この花と出会ったのは15年ほど前だ。パソコンのメールでやり取りする植物に詳しいKさん(女性)から教えてもらった。

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 オニコナスビは倒木の根にひっそりと花を咲かせていた。数は多くはないが、鮮やかな色であるため、咲くと目立つ植物だ。最近、SNSでオニコナスビの在処が拡散し、広く知れわたってしまった。観賞に訪れるだけならまだしも、スマートフォンやデジカメで簡単に撮影できる世の中になったため、つい撮影に夢中になり、花に近づきすぎて花や根を痛めている。

 筆者はこの谷を訪れるたびに、生息地の周りに石を積み、踏まれないよう保護してきた。ある日、筆者がいるときに、1人の女性登山者が撮影に夢中になり、保護しているなかに足を踏み入れた。「根を踏んでいるよ」と注意をしても止めない。宝物を得たい一心で花の撮影を続けた。腹が立った。

登山者に踏まれたオニコナスビの生息地。中央に踏み跡がある。花も踏まれてちぎれていた。
登山者に踏まれたオニコナスビの生息地。
中央に踏み跡がある。花も踏まれてちぎれていた。

 同じようなことが毎年続いている。今年7月末に訪れると、2m四方の生息地に足を踏み入れた跡があり、無惨に花が蔓からちぎれていた。筆者は周りの手頃な石を集め、踏まれそうな所に置いた。集めては石を置く、それを繰り返した。

 男女4人組がやってきた。目的はオニコナスビだ。この4人組の撮影が一段落したところで、「手伝って」と声をかけた。4人組は早速、周りの石を集めてきた。筆者は集まった石を踏まれそうな所に置いた。作業が終えると、女性の1人が感動して活動費1,000円を寄付してくれた。男性からも同じく1,000円の寄付。筆者の名前を告げると、「山の季刊誌『のぼろ』に載っていた人ですね」と。

 グループの名前を尋ねると、そのまま縦走路へ登っていった。感謝の気持ちで「お気をつけてね!」と声をかけた。帰宅してすぐに「脊振の自然を愛する会」の口座に入金した。

 花は季節を感じて咲く。植物の不思議を感じる。咲く期間は1週間のものもある。オニコナスビは毎年7月20日ごろ咲き始める。種が風で飛ぶのか、生息地は少しずつ広がっている。しかし毎年、花の数は多くない。ぽつりぽつり咲いている。数年前、見事に咲いた時期があった。もう一度、たくさん咲いたオニコナスビの花畑をみたいものである。かよわい花なので、大切に見守ってほしい。

鮮やかな色のオニコナスビ(2020年7月28日撮影)、花の大きさは親指の先くらい。
鮮やかな色のオニコナスビ(2020年7月28日撮影)、
花の大きさは親指の先くらい。

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

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