『脊振の自然に魅せられて』夏の花オニコナスビ
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脊振山系の一部の標高700m辺りの谷間に、ひっそりと咲く花がある。花の名はオニコナスビ(サクラソウ科)。直径1㎝ほどの5枚の花弁は鮮やかで、エネルギッシュに燃える黄色である。ロート状の花の奥は赤く色付き、地を這う蔓状の茎に花をつける。丸みのある対生(向かう)した2枚の葉は毛に覆われている。
この花と出会ったのは15年ほど前だ。パソコンのメールでやり取りする植物に詳しいKさん(女性)から教えてもらった。
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【脊振の自然に魅せられて】橙色のヤマツツジに元気もらうオニコナスビは倒木の根にひっそりと花を咲かせていた。数は多くはないが、鮮やかな色であるため、咲くと目立つ植物だ。最近、SNSでオニコナスビの在処が拡散し、広く知れわたってしまった。観賞に訪れるだけならまだしも、スマートフォンやデジカメで簡単に撮影できる世の中になったため、つい撮影に夢中になり、花に近づきすぎて花や根を痛めている。
筆者はこの谷を訪れるたびに、生息地の周りに石を積み、踏まれないよう保護してきた。ある日、筆者がいるときに、1人の女性登山者が撮影に夢中になり、保護しているなかに足を踏み入れた。「根を踏んでいるよ」と注意をしても止めない。宝物を得たい一心で花の撮影を続けた。腹が立った。
同じようなことが毎年続いている。今年7月末に訪れると、2m四方の生息地に足を踏み入れた跡があり、無惨に花が蔓からちぎれていた。筆者は周りの手頃な石を集め、踏まれそうな所に置いた。集めては石を置く、それを繰り返した。
男女4人組がやってきた。目的はオニコナスビだ。この4人組の撮影が一段落したところで、「手伝って」と声をかけた。4人組は早速、周りの石を集めてきた。筆者は集まった石を踏まれそうな所に置いた。作業が終えると、女性の1人が感動して活動費1,000円を寄付してくれた。男性からも同じく1,000円の寄付。筆者の名前を告げると、「山の季刊誌『のぼろ』に載っていた人ですね」と。
グループの名前を尋ねると、そのまま縦走路へ登っていった。感謝の気持ちで「お気をつけてね!」と声をかけた。帰宅してすぐに「脊振の自然を愛する会」の口座に入金した。
花は季節を感じて咲く。植物の不思議を感じる。咲く期間は1週間のものもある。オニコナスビは毎年7月20日ごろ咲き始める。種が風で飛ぶのか、生息地は少しずつ広がっている。しかし毎年、花の数は多くない。ぽつりぽつり咲いている。数年前、見事に咲いた時期があった。もう一度、たくさん咲いたオニコナスビの花畑をみたいものである。かよわい花なので、大切に見守ってほしい。
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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