「電気工事業者特別レポート」発刊~業界の今に迫る(前)
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(株)データ・マックスは地場電気工事業界の市場調査を実施した。調査の対象は、福岡都市圏に活動拠点を置く売上高上位55社。建設活況を経て好決算企業が多いが、外部環境が激変しており、課題も顕在化。電気工事業界の今を読み解く。
上位業者は良化傾向に
福岡都市圏で上位の売上高を誇る企業の財務体質が良いという認識をもつのは当然なことだが、リーマン・ショックを経て債務超過に陥るなど、脆弱な体質の企業も少なくない。だからこそ、今回のレポートを目にして驚く読者も多いだろう。全体的な財務の良化が見られるからだ。
2014年の福岡市内上位30社と比較してみる。この当時と今回の調査で算出された自己資本比率を見ると、14年に30%未満の企業が12社だったのに対し、今回の調査対象上位30社で同比率が30%を下回る企業はない。前回の自己資本比率の最下位はマイナス指標、つまり債務超過の状態であったのに対し、今回は債務超過の企業はなかった。また、無借金経営の企業も8社から11社に増加。建設業界の活況にともない、電気工事業界にも良化の潮流が現れている。また、今回取り上げた55社のうち、純資産が減少したのは4社のみ。51社については内部留保を積み増している。
一方で、倒産した企業もある。(株)信光電設(福岡県大野城市)は太陽光発電システムから配線工事まで幅広い工事を手がけていたものの、その収益性は低調に推移。21年9月期(決算期変更、9カ月決算)の売上高は約2,400万円に落ち込み、債務超過の状態となっていた。このように収益性に課題を抱える企業がコロナ禍に対応できないケースが散見された。
今回の特別レポートには、福岡県下の自己資本マイナス企業も収録した。活況下でも119社が債務超過となっている。これらの企業が債務超過に転落した理由はさまざま。必ずしも売上高の減少が原因ではないものの、電気工事業界全体において信号機のLED化や大型太陽光発電施設の新築工事、教育施設の空調設置工事などが一巡し、いわゆる「特需」が終わったことで業績が下がった企業も少なくない。
また、ひとくちに電気工事といっても施設内電気設備や道路照明、送電線建設、大型太陽光発電施設の造成やパネル設置と、その工事の種別は多岐に渡る。手がける事業によっても外部環境の影響度合いは異なる。
たとえば、パチンコホールでは改正風営法に対応したパチンコ・スロット台の購入や、改正健康増進法施行にともなう分煙環境整備などで設備投資を余儀なくされ、費用負担が増加。そこにコロナ禍における一部メディアによる偏向報道が追い打ちとなり、客足が遠のいたことで、ホールはこれまでにない逆境に追い込まれている。「プラザ赤坂」のような大型・好立地の店舗も閉店に追い込まれるほどで、ホールを主要取引先にしていた企業の破産も散見されるようになった。ホールのネオン看板製造を手がけていた(株)昭光社(福岡市中央区)が、7月22日に福岡地裁より破産手続開始決定を受けたことは記憶に新しい。ホール関連の工事を収益源としていた企業は軒並み影響を受けており、電気工事業者のなかにも少なからずホールから相応の受注を得ている企業がいるため、今後の動向が注目される。
1億円を超える工事も多数
大型工事のリストから、21年の電気工事業界ではどのような需要があったのかを分析してみたい。
本レポートでは、企業データ内で各企業の「主な完成工事」を掲載している。これは各企業の完成工事(100万円以上)のうち、金額の高いものから5件を抜粋したものであり、今回掲載したなかで1億円を超えるものは49件となった。最も高額だったのは、(株)平和電興の「九州電力送配電(株)配電委託工事」で8億851万円。平和電興は「西武ハウス香椎浜M電気設備工事」でも8億円台の工事を受注しており、今回の55社のなかではトップとなる41億903万円の売上高を計上した。2位の(株)アーチ電工の売上高は20億8,259万円。平和電興は福岡都市圏において頭1つ抜けた存在となっている。
1億円を超える工事では、利益率の高い官庁工事の割合が高いと思われたものの、約6割が民間企業からの受注であった。このなかで多く見られるのは、やはり「九州電力」であった。前述の平和電興の工事もしかり、アーチ電工が受注する工事にもその名前が並ぶ。その工事内容はさまざま。電線の工事や道路の新設、改修とそれにともなう関連工事などだ。高額になればなるほど大型の工事となるため、それだけの人材確保能力や資本的な体力が問われ、受注できる企業は自ずと限られてくる。
大型工事のデータを見ると、マンションや商業施設の新築工事でも1億円を超えるものは珍しくないことがわかる。当レポートに掲載されている工事リストのなかにはマンション新築工事を1億2,100万円で、ホテル新築工事を1億5,763万円で受注されているものもあった。新築マンションの需要にともない、大型の電気工事が求められることが必然となるため、建設業界の浮き沈みとは切っても切れない関係にあることがわかる。
(つづく)
【杉町 彩紗】
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