2024年11月25日( 月 )

「電気工事業者特別レポート」発刊~業界の今に迫る(後)

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 (株)データ・マックスは地場電気工事業界の市場調査を実施した。調査の対象は、福岡都市圏に活動拠点を置く売上高上位55社。建設活況を経て好決算企業が多いが、外部環境が激変しており、課題も顕在化。電気工事業界の今を読み解く。

高止まりの資材価格に嘆きの声

 取材したなかで、多く聞かれたのが「資材価格の高騰」だ。昨今、多く聞かれるウッドショックはようやく落ち着きを見せ始めたものの、その価格はコロナ禍以前には戻っておらず、今後も完全に戻る見込みはもてないとみられる。

 このウッドショックにつられるかのように叫ばれ始めたのが、電気業関係の原材料価格の上昇だ。レポート内でも説明しているが、樹脂材料や金属材料の高騰、物流費の上昇などによって電材の価格が上昇している。この潮流はメーカーごとにじわじわと伝播していたものだが、パナソニックでは10月1日以降、一部の商品で価格を改定すると発表している(※Panasonic公式サイト6月10日「2022年10月価格改定のお知らせ」参照)。対象品種は75製品。5~10%の上昇率のものもあるが、最大値となるシステム機器(戸建HA・信号機器)のコール親機については+120%の改定が予定されている。パナソニックはこの改定について、これまで価格維持のための企業努力を行ってきたことを述べたうえで、「今後の安定供給のため」と説明している。ある電気工事業者は「ここ2~3年は価格の高騰を感じていたが、コロナ禍に入ってからはさらにその傾向が強まったと感じる」と指摘している。

    また、銅線の価格上昇も著しい。16年9月に1tあたり55万5,000円だった銅の取引基準価格(銅建値)は、今年6月には127万円に到達。7月の時点では108万5,500円まで低下しているものの、昨年1年間でも増減を繰り返しながら上昇してきたことから、一度下がったとしても安心できない。

 また、価格高騰だけでなく、半導体関連商材などの「物がない」という状況が発生していることも問題だ。価格上昇が供給量の不足に端を発していることからわかるように、そもそも電材の流通量が減少している。物がなければ、そもそも工事を受注することさえ叶わない。電材業者から確実に商品を入手すべく、仕入先との関係構築などの調達力を培う重要性も露わにした。

従事者数は下げ止まるも陰りを見せる

 建設業界は異業種にも増して慢性的な人材不足に悩まされている。定年退職が相次ぐと予想される「2025年問題」を間近に控えており、どの企業においても現場の人手不足の深刻化が叫ばれていた。一部企業では事業拡大を視野に入れていたものの、人材獲得難からその機会を見逃さざるを得なかったり、事故を防止するために中規模程度の工事の受注にとどめたりしているという。若年層の入職・定着のため、給与体系をはじめとした福利厚生の見直しを行い、奏功した企業もある。

 人材獲得だけでなく、事業承継問題も叫ばれている。人材にまつわる問題は山積している状態だ。

変わる様相に対応し続ける

 昨今の建設業界では、官庁工事の辞退が相次いでいる。原因は工事単価の低さにある。「官庁工事は利益を確保できる」という声が大きかったものの、近年は地方自治体の財政状況や積算能力の低下によって、単価が下落している。糸島市発注工事の「入札不調」多発問題はその典型例だろう。

 電気工事業界においては、公共工事単価は相応に確保されていると聞く。しかし、環境が変化してもおかしくない。建設市況だけでなく、他業界へのアンテナ張りや協力会社の官民の受注構成など、これまで以上に情報に鋭敏にならなければならない。目まぐるしく変化する外部環境にアンテナを張っていなければ、淘汰の憂き目に遭うことになるだろう。

電気工事業者特別レポート 申込用紙
電気工事業者特別レポート 申込用紙
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(了)

【杉町 彩紗】

(前)

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