政府、原発7基を再稼働へ 「原発依存を低減」から転換
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原発7基を来夏以降に再稼働する方針
岸田首相は24日のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、これまでに再稼働した原発10基に加えて、7基の原発を来夏以降に再稼働する方針を示した。
政府は、福島第一原発事故から10年を迎えた2021年に策定した「第6次エネルギー基本計画」のなかで、福島第一原発事故を教訓として、「可能な限り原発依存度を低減する」方針を掲げてきたが、今回、「原子力を最大限活用していく」と大きく政策を転換した。「電力需給のひっ迫」などを理由に挙げている。
再稼働する方針を示した原発は下記の通り。
再稼働する方針の原発7基は設置変更許可を取得しているが、そのうち高浜1、2号機、女川2号機、島根2号機は再稼働までに安全対策工事の実施が必要となっている。柏崎刈羽6、7号機はテロ対策の不備が問題となり、東海第二は避難計画の不備を理由に水戸地裁が運転差し止めを命じており、ともに地元の同意が得られず、再稼働の見通しが立っていない。
福島第一原発の事故から10年が経っても、廃炉問題が解決する見通しが立たないなかで原発の再稼働を進めるのは、国として「原発の安全性」に向き合っているとはいえない。福島第一原発事故の被害を目の当たりにした住民が、事故が起こった場合を考えて地元の原発の再稼働に同意しないのは賢明な判断だろう。
政府は今回の会議で原子力に関して、「安全確保を大前提とした運転期間の延長など既存原発の最大限活用」「次世代革新炉の開発・建設」「再処理・廃炉・最終処分のプロセスの加速化」を検討することを掲げた。すでに再稼働している原発10基、再稼働する方針の7基、設置許可審査申請済みの10基、未申請9基を含めて再稼働し、30年の発電電力量に占める原子力の構成割合20~22%の実現を目指すとしている。現在、原発の運転期間は40年、延長した場合でも最長60年とされるが、運転期間の延長に向けて規制の見直しを検討するという。
一方、「第6次エネルギー基本計画」には、21年時点で約1万9,000tの使用済み燃料が存在し、管理容量の約8割に達していることが記載されている。解決されない使用済み燃料の後始末の問題を棚上げしたままで原発の再稼働を進めても、問題を未来に先送りしているだけだ。まず、今ある使用済み燃料の問題を解決することを優先すべきではないだろうか。
次世代の原子炉の開発や建設
政府は今回の会議で、次世代の原子炉の開発や建設を検討する方針を示している。次世代原子炉には「小型モジュール炉(SMR)」「次世代軽水炉」などがある。
「小型モジュール炉」は発電容量が300MW以下で、現地で1つひとつ建設する通常の原発とは異なり、多くの部材を工場で生産して現地で組み立てるため、工期が短くなる。日揮ホールディングス(株)と(株)IHIが米国のNuScale Power, LLCに出資してプロジェクトに参画しており、NuScale Power は29年に小型モジュール炉の初号機の運転開始を予定している。
「高速炉」に関しては、ビル・ゲイツ氏が創設したテラパワーと(国研)日本原子力開発機構(JAEA)、三菱重工業(株)の3社で今年1月26日に覚書が締結された。テラパワーは28年に「Natrium炉」の運転を目指すという。また、米国GE日立ニュークリア・エナジーと日立GEニュークリア・エナジー(株)が、電気出力30万kW級の「BWR型小型モジュール炉」を共同開発しており、日本国内でも実証実験を進めていくという。
いずれにしても原発は安全性が課題となることが予想されるため、原発に依存しないエネルギー供給体制を確保することが求められている。
【石井 ゆかり】
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