2024年12月22日( 日 )

企業経営は厳しさが加速 淘汰の時代に必要な備えとは(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

税理士法人アップパートナーズ
代表社員税理士 菅 拓摩 氏

 コロナ禍における救済措置が終わりの兆しを見せ始め、企業経営はますます厳しい状況に追い込まれている。コロナ禍において財務状況はどのように変化したのか、また、中小企業がこの逆境を打破するためにはどのような対策が必要か。九州トップ規模を誇る税理士事務所である、税理士法人アップパートナーズの代表社員税理士・菅拓摩氏に話をうかがった。

(聞き手:(株)データ・マックス 専務取締役 緒方 克美)

家族を守るための見直しを

 ──では苦しい中小企業はどのような舵取りを行うべきでしょうか。

 菅 リーマン・ショック以前とは異なり、現在ではほとんどの場合、金融機関はリスケジュール(リスケ)に対応してくれますので資金繰りの観点からはそれを視野に入れるべきと思います。ただ、その前に、借入をはじめとしたあらゆる方法で資金確保を行うことを強く勧めます。その方策が尽きたのであれば、リスケもやむを得ません。リスケに比べると成功の可能性は格段に低くなりますが、M&Aによって大手の傘下に入り、復活した企業もあります。つい最近も顧問先の会社が、検品作業を行う会社を買収しました。これで検品にかかるコストが減り、外部からの売上も期待できるので一石二鳥だったようです。売り手は経営者としての地位を維持しつつ、借入の連帯保証からは外れたので精神的にホッとしているようでした。

福岡オフィスエントランス
福岡オフィスエントランス

    また、税理士としては、経営者の死亡リスクについて、これを機に考えていただきたいです。近年多いのが「借金を抱えた若い経営者の逝去」です。借金過多の状態で亡くなられた場合、お父さんが抱えていた借金が奥さんやお子さんに降りかかってしまいます。相続放棄ができればいいのですが、それが不可能、もしくは行えたとしても意味を成さないことも多々あります。奥さんが名目上の専務となっていたり、直前にお子さんへ事業承継を行っていていたりすると、借入の連帯保証を負っているケースがかなり多いです。相続放棄で借入をいったん清算し、一からやり直せる可能性があるのに、大きな障害になっています。

 企業で生命保険に入っている場合、金融機関が生命保険に質権設定しているケースがあります。この場合、生命保険で会社に2億円保険金が入ったとしても、借金が2億円であればそのまま団信(団体信用生命保険:住宅ローン契約時に加入する保険。契約者が死亡した場合、以降の住宅ローンの支払いが免除される)のように返済しなくてはなりません。銀行側も若い経営者の急逝は頻繁に起こるものではないと思っています。保険を担保に取る代わりに低い利率で貸してくれていて、借入れた段階では双方にとってベストな選択だったのだろうと思います。そのようなケースでは「個人で生命保険に入っておくこと」です。個人加入であれば、加入者本人が亡くなられた後はたとえ相続放棄をしてもご遺族の方に保険金が入ります。会社という負の財産を一度きれいにしてしまうことで、ご遺族は立て直しを図ることができるのです。

 経営環境がとくに厳しく、借金の返済が難しい場合にこそ保険契約がどうなっているか、一度契約内容を見直し、大切な家族の生活を保全できているかどうかを確認すべきです。

税理士法人アップパートナーズ 代表社員税理士 菅 拓摩 氏
税理士法人アップパートナーズ
代表社員税理士 菅 拓摩 氏

    ──倒産についてはいかがでしょう。

 菅 建設業は急速に業績が悪化し、倒産が増え始めているように思います。工事の契約締結当時の資材価格は通常の水準で、工事が動き始めた段階になって原材料が高騰し始めたために、当初の見積もりが意味を成さなくなっています。工事件数は抱えているのにコストに合わず、自転車操業に陥っているのです。建設業においては前期決算が良い着地であったところが多かったものですから、今後が注目されるところになっています。運送業や農業なども海外インフレと円安のダブルパンチのようになっていますから、今後が心配です。

 企業の数が減るということは、我々税理士の市場も同じく減るということになります。一蓮托生のパートナーとして、今後も相応の覚悟をもって取り組む所存です。

(了)

【文・構成:杉町 彩紗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:菅 拓摩
所在地:福岡市博多区博多駅東2-6-1
設 立:2008年9月
資本金:6,600万円(グループ合計)
売上高:約24億円(グループ合計)
TEL:092-403-5544 
URL:https://www.upp.or.jp

(前)

関連記事